Time-lapse 培養によって得られる情報は 初期胚評価に有効か?
2016年度 年次大会-講演抄録|日本臨床エンブリオロジスト学会 Workshop
学会講師:末永 めぐみ
Abstract
初期胚移植では,これまでVeeck分類をはじめとして主に形態を重要視した胚評価により移植胚の選択がなされてきた.しかしその精度には限界があり,グレーディングと実際の着床能の乖離が散見される.一方,タイムラプスインキュベーターは間歇的かつ連続的な画像撮影保存によって経時的な胚の形態観察を可能とした.当院ではこれまでにEmbryoscope( ES)を用いて胚発育の経時的変化を加味した初期胚評価法を考案し,報告してきた.
当院の評価法は卵子・胚の細胞質の特徴的形態および5細胞期までの分割速度を基に胚盤胞発育能や着床能を分析し,良好な順にグレードを1から5までの5段階に分類している.今回,初回採卵症例で採卵周期に選択的単一初期胚移植を行った周期を対象として,当院の評価法を用いた初期胚移植の結果を前
方視的に検討したので報告する.培養器および移植胚の選別方法別に① SI-V 群;Personal incubator(ASTEC社製)で培養しVeeck分類にて選別した群, ② ES-V 群;EmbryoScope で培養しVeeck 分類で選別した群, ③ ES-M 群;EmbryoScope で培養し当院の評価法で選別した群の3群に分け,臨床妊娠率・流産率について臨床成績を比較検討した.
Day3ETの臨床妊娠率はSI-V群,ES-V 群,ES-M 群の順に29.9%,25.0%,53.1%とES-M 群が有意に高い値を示した.流産率は有意差を認めなかった.また新鮮胚および凍結胚移植をあわせた採卵あたりの妊娠継続率は3群間で同様の値を示したものの,継続妊娠に至るまでの移植回数はSI-V 群,ES-V 群,ES-M群の順に1.68回,1.71回,1.29回とES-M 群がSI-V 群に対し有意に低い値を示し,ES-V群に対しても有意差は認められないものの,低い値を示した.以上の結果より,初期胚移植においてTime-lapse 培養によって得られる情報の有効性が明らかとなり,さらに継続妊娠に至るまでの移植回数の減少は患者の身体的・精神的負担の軽減につながると思われた.