Papers and Abstracts

論文・講演抄録

rescue ICSIの臨床的有用性

学術集会 一般演題(口頭発表)

2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:長谷川 久隆・渡邉 英明・鈴木 亮祐・塚本 佳奈・石橋 和見・菊本 晃代・京谷 利彦・小林 充・河田 真智子・齋藤 優・小林 淳一

神奈川レディースクリニック

Abstract

【目的】
当院では,全c-IVF 施行症例に対し,媒精後5時間で2PB 放出の確認を行っている.
その後1時間毎に再確認を行い,最終的に8時間後まで確認を行い2PB放出率が50%以下の症例に対してrescue ICS(I r-ICSI)を施行し,低受精および完全受精障害の防止に取り組んでいる.
本検討では,r-ICSI 適応となった症例の胚利用率の変化と,凍結融解胚移植における妊娠率を算出しr-ICSIの臨床的有用性を検討し報告する.

【方法】
2015年1月から2016年12月までのc-IVF 施行症例のうち,r-ICSI 適応となった161周期について,r-ICSIによる受精率,多前核率,分割率,Day3良好胚率,Day5胚盤胞率,Day5良好胚盤胞率,Day6胚盤胞率,総胚盤胞率から,胚利用率を算出した.
さらに,r-ICSI由来凍結融解胚盤胞移植とconventional ICS(I c-ICSI)由来凍結融解胚盤胞移植の妊娠率を比較検討した.

【結果】
c-IVFを施行した161周期,総M2卵子916個のうち537個に対し媒精から7 〜8時間後に1PBと判定しr-ICSIを施行した.
r-ICSI施行後の成績は,受精率70.8%(380/537),多前核率15.6%(84/537),分割率98.2%(373/380),Day3良好胚率46.1%(172/373),Day5胚盤胞率38.7%(12/331),Day5良好胚盤胞率19.9%(66/331),Day6胚盤胞率16.9%(56/331),総胚盤胞率55.6%(184/331)であった.
r-ICSI由来凍結融解胚盤胞移植の妊娠率は53.5%(23/43),c-ICSI 由来凍結融解胚盤胞移植の妊娠率は38.1%(494/1298)で,有意差は認められなかった.

【考察】
多前核形成の原因が多精子受精によるものと断定はできないが,r-ICSI 施行後の多前核率は高率であった.
また,媒精当日2PBの放出により受精すると予測した卵子の24.0%(91/379)が,翌日の観察で未受精であった.
これらのことから,2PBを基準とする受精予測は精度をさらに上げる必要があると考えられる.
しかし,現在の精度でのr-ICSIによっても,施行しなかった場合(未受精が予測される卵子を放置した場合)に対し,受精卵獲得数は2.5倍,総胚盤胞獲得数は2.4倍,Day5良好胚盤胞獲得数は1.9倍に上昇し,胚利用率の向上に寄与することは明白である.
また,凍結融解胚移植により,c-ICSI由来胚盤胞と比較し同等の妊娠率を得られた.
以上のことから,r-ICSIは臨床上非常に有用であることが示唆された.

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