Papers and Abstracts

論文・講演抄録

Rescue-ICSIにおける紡錘体観察は有用か?

学術集会 一般演題(口頭発表)

2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:古川 悦子・小林 充・渡邉 英明・長谷川 久隆・塚本 佳奈・鈴木 亮祐・石橋 和見・菊本 晃代・京谷 利彦・齋藤 優・小林 淳一

神奈川レディースクリニック

Abstract

【目的】
Rescue-ICS(I r-ICSI)は,c-IVFにおける完全受精障害を回避する方法として有用であることが知られている.
しかし,人為的な多前核胚作出のリスクを伴うためc-IVF 後の受精の兆候の確認には,第2極体のみならず,fertilization cornやcytoplasmic flareをあわせて観察する方法が報告されている.
当院では,第2極体の有無のみをr-ICSI 施行の指標としているが,r-ICSI 施行時には同時に紡錘体の観察を行っている.
本検討ではr-ICSIの成績を後方視的に解析し,紡錘体の有無がr-ICSI 施行の指標となり得るか否かを検討した.

【方法】
2016年1月から2017年5月までに当院にてr-ICSIを施行した105症例を対象とした.
媒精後5時間で第2極体の確認を行い,その後1時間経過ごとに最大8時間まで確認した後,第2極体が観察されない卵子が50% 以下の症例に対してr-ICSIを施行した.
その際,オリンパスIX-ROBOpolarを用いて紡錘体を観察し,紡錘体が観察できた卵子(可視卵子)と紡錘体が観察できなかった卵子(不可視卵子)における正常受精率,多前核率,D5胚盤胞発生率の比較を行った.

【結果】
r-ICSI 時における紡錘体観察の結果,可視卵子は86.6%(246/284),不可視卵子は13.4%(38/284)であった.
正常受精率は,可視卵子77.2%(190/246),不可視卵子44.7%(17/38)であり,可視卵子において有意に高い結果となった.
一方,多前核率は,可視卵子12.2%(30/246),不可視卵子28.9%(11/38)であり不可視卵子において有意に高い結果となった.
D5胚盤胞発生率は可視卵子46.9%(83/177),不可視卵子12.5%(2/16)であり可視卵子において有意に高い結果となった.

【考察】
今回の結果から,紡錘体不可視卵子へのr-ICSIの施行は可視卵子に比べ多前核胚作出のリスクが高く,D5胚盤胞発生率も低いが,正常受精率も44.7%であり,施行の可否を正確に判断するのは難しいと考えられた.
一方,紡錘体可視卵子へのr-ICSIの施行は正常受精卵を得られる可能性が高く,D5胚盤胞発生率も良好であるが,多前核胚の人為的作出を完全に回避することはできなかった.
以上のことから,第2極体が観察されない卵子において紡錘体の有無はr-ICSI 施行の完全な指標にはなり得ないことが示唆され,今後はより正確で安全なr-ICSI 施行のためにさらなる検討が必要であろうと考えられた.

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