Piezo-ICSIにおける紡錘体の可視/不可視が受精及び胚発育へおよぼす影響
2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:平岡 謙一郎1,2,3,4)・伊林 恵美1)・齋藤 雅人1)・資延 優梨1)・大塚 喜人2)・川原 麻美1)・石川 智則3,4)・川井 清考1,2,3,4)・原田 竜也1)
1) 亀田IVFクリニック幕張 生殖医療科
2) 亀田メディカルセンター 生殖医療科
3) 東京医科歯科大学 産婦人科
4) 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構
Abstract
【目的】
ICSI 時に偏光観察による卵子の紡錘体の状況(可視/不可視)が卵子の受精,胚発育へ影響をおよぼすことが多く報告されている.
しかし,これらの報告はconventional-ICSIに限られており,Piezo-ICSIにおいて偏光観察による紡錘体の可視/不可視が受精及び胚発育へおよぼす影響を調べた報告はない.
そこで我々は,Piezo-ICSI において偏光観察による紡錘体の可視/不可視が受精及び胚発育へおよぼす影響を調べた.
【方法】
2016年5月から2017年6月までの間,当クリニックにおいてPiezo-ICSIを行った74症例89周期から採取した卵子のうち,採卵から3時間後の卵丘細胞除去時に第一極体を放出していた336個の卵子を対象とした.
倒立顕微鏡はIX-73(オリンパス),紡錘体観察にはIX-3-ICS(I オリンパス)を使用した.
精子の選別は倍率1,200倍下にて行い,不動化処理を行った後,Piezo-ICSIにより卵細胞質内へ精子を注入した.
採卵から4時間後に行った偏光観察による紡錘体観察の状況から下記の3群に分けた.
・紡錘体(+)群:ICSI 時,紡錘体が可視化出来た卵子
・紡錘体(-)→(+)群:ICSI 時,紡錘体が不可視で30-90分の追加培養後に紡錘体が可視化出来た卵子
・紡錘体(-)群:ICSI 時,紡錘体が不可視で120分の追加培養後も紡錘体が不可視であった卵子
上記3群のPiezo-ICSI後の正常受精率と3日目良好胚率を比較した.
尚,正常受精は顕微授精18時間後に2前核を認めたもの,3日目良好胚は採卵3日目に7細胞以上で等分割,フラグメンテーションの割合が15% 以下の胚と定義した.
【結果】
第一極体を放出していた366個の卵子のうち,紡錘体(+)/(-)→(+)/(-)であった卵子の内訳はそれぞれ93.8%(315/336),2.4%(8/336),3.9%(13/336)であった.
紡錘体(+)/(-)→(+)/(-)群のPiezo-ICSI後の正常受精率はそれぞれ91.4%(288/315),75.0%(6/8),23.1%(3/13)であった.
紡錘体(+)/(-)→(+)/(-)群の3日目良好胚率はそれぞれ64.2%(185/288),66.7%(4/6),0%(0/3)であった.
【考察】
今回の検討結果より,Piezo-ICSIにおいて偏光観察による紡錘体の可視/不可視は受精及び胚発育へ影響をおよぼし,紡錘体が不可視の状態では受精率は低く,胚発育は不良であった.
また,紡錘体が不可視であっても,紡錘体が可視化出来る状態まで待ってICSIを行うことで卵子の受精及び胚発育を改善出来ることが示唆された.
今後,症例を追加して偏光観察がPiezo-ICSIの成績を改善するのか詳細に検討する必要がある.