Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-8 ART妊娠後の流産と子宮内フローラの関連性について

学術集会 一般演題(口頭発表)

2023年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:坂井 和貴1)・長谷川 麻理1)・野手 健造1)・杉野 明香2)・田中 克2)・荒井 渉2)・芦川 亨大2)・嶋田 美穂2)・伊木 朱有美1)・鍋田 基生1)

1)つばきウイメンズクリニック,2)Varinos株式会社

Abstract

【目的】近年、子宮内細菌叢(子宮内フローラ)と不妊症の関連性が指摘されているが、妊娠成立後における流産と子宮内フローラとの関連性の研究は豊富とは言えない。そこで本研究では、ART妊娠後の周産期予後と子宮内フローラの関連性について後方視的に検討を行った。【方法】2021年4月から2022年12月までに当院にてART妊娠後に流産あるいは正期産となり、喫煙歴なし、慢性子宮内膜炎陰性、かつ流産症例については流産絨毛染色体検査(POC検査)が実施され胎児の染色体異常の有無が確認された18症例を対象とした。子宮内フローラ検査では、子宮内腔液を採取しNGSを用いて各細菌の占有率を算出した。POC検査の結果を考慮し、周産期予後と子宮内フローラの関連性について検討を行った。尚、本研究は患者同意を得て行った。【成績】対象症例をPOC検査の結果を含めて流産Euploid群(6症例)、流産Aneuploid群(5症例)、出産群(7症例)に分類した。属レベルで見るとBifidobacterium属の平均占有率は12.5%、0.0%、0.0%と流産Euploid群で高い傾向にあった。Lactobacillus属の平均占有率はそれぞれ53.8%、22.0%、56.4%となり有意差は認められなかったが、種ごとに層別し比較検討した結果、L.gasseriの平均占有率が3.3%、1.6%、29.7%と出産群で高い傾向となった。また、L.inersについては30.6%、19.8%、14.0%と流産Euploid群で高い傾向となった。【結論】流産Euploid群、流産Aneuploid群、出産群において、属ごとに検出率および平均占有率の比較を行った結果、有意な差は得られなかった。Bifidobacterium属、Prevotella属は流産Euploid群で平均占有率が高い傾向があり、これらの菌は胚の染色体数が正常であるEuploidで見られるため、周産期予後に悪影響を及ぼしている可能性が考えられた。また、Lactobacillus属について種レベルで比較した結果、L.gasseriは出産群において平均占有率が高く、L.inersは流産Euploid群において平均占有率が高い傾向が見られた。これらのことから、同じLactobacillus属でもL.gasseriは妊娠維持に関わる可能性が考えられ、L.inersは流産と関連する可能性が示唆された。

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