Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-7 精子調整法の違いによる精子DNA fragmentation率の比較

学術集会 一般演題(口頭発表)

2021年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:鈴木 理恵1)・山上 一樹1)・寺田 堅斗2)・武内 大輝2)・岸 加奈子1)・古橋 孝祐1)・江夏 徳寿1)・岩﨑 利郎1)・前沢 忠志2)・池田 智明2)・塩谷 雅英1)

1) 英ウィメンズクリニック, 2) 三重大学大学院医学系研究科産科婦人科学

Abstract

【目的】
ARTの精子調整で用いられる密度勾配遠心分離法(以下:DGC)
は,精子に対する物理的ダメージやsperm DNA fragmentation
(以下:SDF)の増加が懸念されている.
以前当院では遠心分離を行わず運動良好精子を選別する装置「ミ
グリス」(株式会社 メニコン)とDGCとの比較検討を行うため,簡易SDF測定キットHalosperm®G2( Halotech DNA)を使用した
(2019,日本IVF 学会).その結果,SDF 値はミグリスの方が低値
であった.しかしながら,Halosperm®G2は染色後,目視による測
定となり,客観性に乏しい問題があった.そこで本検討では,客観
的な方法としてTUNEL 染色を行ったあとフローサイトメトリー(以下:FCM)で解析しSDF値を測定した.本研究では,以前のDGCとミグリスに加えて,遠心分離法(以下:Was h)の3群のSDFを比較検討したので報告する.
【方法】
2020年5月から10月に精液検査を受けた患者のうち,同意を得られた51症例の精液検体を用いて検討を行った.ミグリスには精液1.5mlを使用し,残りはDGC・Washへそれぞれ供試した.精子調整には,Universal IVF Medium(以下:UIM, Origio)を用いた.DGCではSepa Sperm(株式会社 北里コーポレーション)を用いて200G×10分で2層(80%,40%)密度勾配遠心分離法を施行し,上清除去後UIMを用いて200G×5分遠心分離後,調整液を回収した.WashはUIMに精液を混濁し200G×20分で遠心分離を行った.調整法ごとに精子数2×10^6個になるように一部を回収してTUNEL染色を行った後,FCM で解析し比較検討を行った.
【結果】
51症例の平均患者年齢は36.7歳,原精液所見は液量が3.5ml,精子濃度が114.0×10^6個/ml,運動率は59.3 %であった.平均SDF 値は原精液18.4 %,DGC 16.3 %, ミグリス 7.9 %,Wash20.7%であり,ミグリスが有意に低かった.原精液からみたSDF 値の増減率はDGC 11.2 % 減少, ミグリス54.1 % 減少,Wash は14.7%増加となった.各方法それぞれで増減率を比較したところ,ミグリスが他2群と比較して有意に低値であった.
【結論】
SDF値はミグリスで有意に低下を認めた.一方,DGCとWashで
は検体間で遠心の影響により増減したが,有意差は認められなかっ
た.またミグリスはDGCとWashにおけるSDF値の増減率と比較し
ても有意に低値となった.FCM 法においても,ミグリスはDGC及
びWashよりもSDF 値が低下することが示された.以上より,ミグリ
スはDGC及びWashと比較して,より精子へのダメージが少ない調
整法であることが示唆された.

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