O-7 反復ART不成功例に対する凍結融解胚移植周期多血小板血漿子宮内膜投与法有用性の検討
2023年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:山田 悠太1)・大垣 彩1)・水野 里志1)・上田 匡1)・重田 護1)・辻 勲1)・福田 愛作 1)・森本 義晴 2)・
1)医療法人三慧会 IVF大阪クリニック,2)医療法人三慧会HORACグランフロント大阪クリニック
Abstract
【目的】
多血小板血漿(PRP)には多くの生理活性物質が含まれ、組織修復や再生能力を高めることが知られている。生殖補助医療の分野でも胚移植周期の子宮内腔にPRPを投与することで、子宮内膜の肥厚や着床環境が改善され妊娠率が向上することが報告されている。当院では2021年3月から子宮内PRP療法を開始した。今回、当院での反復ART不成功例における子宮内PRP療法の有用性を検討したので報告する。
【方法】
2021年3月から2022年5月までに、子宮内PRP療法実施周期(以下PRP周期)に凍結融解胚盤胞移植を実施した反復ART不成功例27症例を対象とした。
PRPの抽出にはスマートプレップシステム(テルモBCT株式会社)を用い、子宮内膜への投与は原則月経周期の12日目と14日目に実施した。本検討は認定再生医療等委員会の倫理審査の後、厚生労働省に臨床試験番号PB5200038として登録している。
➀患者背景を評価した。
②症例あたりの臨床妊娠率を算出した。また、前回の凍結融解胚移植から本周期までに着床検査及び治療を追加で実施していない19症例に対し、PRP周期と前回の移植周期で臨床妊娠率を比較した。
③対象症例のうち子宮内膜肥厚を目的とした5症例7周期について移植時子宮内膜厚を過去の移植周期と比較した。
【成績】
➀平均年齢は37.0±4.8歳、過去の平均移植回数は5.6±2.9回であった。ERA検査かつ加療後であった症例は70.4%(19/27)、EMMA検査かつ加療後であった症例は88.9%(24/27)、凝固溶系及び免疫系の着床検査実施かつ加療後の症例は92.6%(25/27)、慢性子宮内膜炎検査実施かつ加療後の症例は85.6%(23/27)であった。また、本検討までにPGT-A正倍数性胚の移植経験がある症例は63.0%(17/27)あった。
②症例あたりの臨床妊娠率は44.4%(12/27)であった。また、同一背景下での比較ではPRP周期の臨床妊娠率は47.4%(9/19)、前回の移植周期では5.3%(1/19)であったが流産となった。PRP周期で臨床妊娠率は有意に高かった。
③子宮内膜肥厚を目的とした5症例の移植時平均内膜厚は8.3±0.8mmで過去の移植時平均内膜厚は8.9±1.0mmと差はなかった。症例ごとに比較しても明らかな肥厚を認めなかった。
【結論】
子宮内PRP療法を実施した症例は、着床に関する様々な検査だけでなくPGT-Aも実施済であり反復ART不成功例の中でも難治性の症例であった。しかしながら、子宮内PRP療法を実施することで、妊娠率が有意に向上した。PRP内に含まれる細胞増殖や血管新生に関与する何らかの成長因子の働きにより着床環境が改善され臨床妊娠に至った可能性が示唆された。また、子宮内膜が明らかに肥厚した症例はなく、本検討では子宮内膜肥厚の効果を認めなかった。
2022年4月からの不妊治療に対する保険適用により、PRP療法のような自費治療との混合診療が不可能となったことから症例のリクルートが困難な状況となっている。どのような症例に有効であるかの検討にはまだ多くの症例が必要であるため、限られた制度の中で子宮内PRP療法の有効性を明らかにするための努力を継続したい。