O-6 凍結融解胚移植の妊娠成績と子宮内細菌叢との関連性
2022年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:野手 健造1)・伊木 朱有美1)・長谷川 麻理1)・坂井 和貴1)・田中 克2)・荒井 渉2)・嶋田 美穂2)・鍋田 基生1)
1.つばきウイメンズクリニック
2.Varinos 株式会社
Abstract
【目的】
近年,それまで無菌と考えられていた子宮内にも細菌が存在することが分かり,子宮内細菌叢(子宮内フローラ)と不妊症の関連性が注目されている.特にLactobacillus 属の占有率と妊娠成績は深く関連しており,反復着床不全の症例においてLactobacillus 属占有率が90%以上である時,妊娠率,生児獲得率が有意に高いことが報告されている.我々は,凍結融解胚移植(FET)において妊娠群でLactobacillus 属占有率が有意に高いことを報告した.本研究では,症例を追加しFET周期における子宮内細菌叢と妊娠成績の関連性について後方視的に検討した.
【方法】
インフォームド・コンセントを得て2018年12月から2021年1月までに当院にてFETを実施し,臨床妊娠の成否が明らかになっている802周期を対象とした.FET 実施以前に子宮内膜を採取し,次世代シークエンサーを用いて子宮内細菌叢検査を行った.解析は患者背景を比較検討し,子宮内細菌叢以外で妊娠の成否に関わる要因を除外した後,検査結果が得られかつ臨床妊娠の成否が明らかな463周期を対象としてLactobacillus 属占有率と妊娠成績との関連性を検討した.
【成績】
全FET周期をFET 妊娠群(305周期)とFET非妊娠群(497周期)に分け,Lactobacillus 属占有率を解析すると平均占有率は妊娠群70.2 %, 非妊娠群63.5 %となり, 妊娠群で有意に高かった
(p=0.007).さらにFET 妊娠群とFET 非妊娠群において患者背
景の比較を行い,有意差があった年齢と難治性慢性子宮内膜炎の
有無を考慮し,最終的に38歳未満の症例かつ難治性慢性子宮内膜
炎を除外した周期(463周期)を対象に絞ってLactobacillus 属占有
率を比較した.FET 妊娠群(229周期)とFET 非妊娠群(234周期)のLactobacillus 属の平均占有率はそれぞれ72.1%,61.1%であり,妊娠群で有意に高かった(p=0.003).
【結論】
本研究の解析の結果,年齢や難治性慢性子宮内膜炎といった子
宮内細菌叢以外の要因を除いた場合でも,妊娠群と非妊娠群で
Lactobacillus属占有率に有意差がみとめられた.FET周期におい
て,Lactobacillus 属占有率が高いとより妊娠しやすいと考えられ,子宮内細菌叢の改善は妊娠成績の向上に非常に重要であることが示唆された.