O-6 当院における新鮮胚移植と凍結胚移植の比較検討
2023年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:人見 裕子・佐々木 亜衣・田中 亜理佐・西村 美希 ・久保田 健・田村 出・山口 剛史・渡邉 由美子・石川 弘伸・渡邉 浩彦
Abstract
【目的】近年、本邦では凍結胚移植が増加しており、なかでも全胚凍結後に融解胚移植を行う施設が増えている。重症OHSSの回避やPPOS法など、全胚凍結が必須な場合以外での医学的必要性に関しては明確な議論が少ない一方で、ホルモン補充による凍結融解胚移植が種々の産科合併症の増加を来すことがわかり、新鮮胚移植を見直す動きも見られる。当院では以前より年中無休の体制のもと、患者が少しでも早く妊娠に至るように、条件が適していれば積極的に新鮮胚移植を行ってきた。今回、新鮮胚移植が有用な選択肢か否かを検討するため、当院の新鮮胚移植、ホルモン補充(HR)による凍結胚移植及び排卵周期での凍結胚移植に分けて臨床成績を後方視的に検討した。【方法】2021-2022年の2年間に当院において胚盤胞移植を行った2523周期のうち、新鮮胚移植367周期(F群)、HR法凍結胚移植を行った1987周期(CH群)、排卵周期で凍結胚移植を行った169周期(CN群)において妊娠率、流産率を胚移植時の年齢別に比較検討を行った。(尚、当院の採卵周期では採卵日の採卵数、E2値、P値、胚の発育速度などにより新鮮胚移植するべきか判断している)【結果】F群、CH群、CN群での移植あたりの妊娠率は、各35歳以下63.3%(50/79)、66.8%(571/855)、56.7%(34/60)、36~39歳では61.0%(83/136)、56.7%(360/635)49.2%((29/59)、40歳以上28.9%(44/152)、40.2%(200/497)、30.0%(15/50)と40歳以上のCH群が高い傾向にあるが有意差はなかった。流産率は、各35歳以下6.0%(3/50)、17.3%(99/571)、11.8%(4/34)、36~39歳では15.7%(13/83)、21.7%(78/360)、13.8%(4/29)、40歳以上43.2%(19/44)、32.0%(64/200)、20.0%(3/15)と35歳以下のF群はCH群より有意に低かった(p<0.05)。【結論】新鮮胚移植も凍結胚移植と同様に良好な妊娠率であった。流産率は35歳以下においてはHR法凍結胚移植で有意に高く、次いで排卵周期凍結胚移植、新鮮胚移植の順で低い結果となった。新鮮胚移植に適した症例を慎重に選択すれば良好な妊娠率が期待できるとともに、35歳以下では流産率も低いため新鮮胚移植は有効な胚移植の選択肢であることが示唆された。また有意差はないものの凍結胚移植においては、HR法より排卵周期での移植による方が流産率は低い傾向にあるため、同法での凍結胚移植を今後増やして検討していきたい。