O-5 胚齢を考慮した移植胚選択順の検討
2021年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:仲宗根 巧真・水本 茂利・渡辺 瞳・長尾 洋三・田中 啓子・戸野本 知子・奥田 紗矢香・後藤 美緒・一木 巴惠・伊賀 淑穂・蔵本 武志
蔵本ウイメンズクリニック
Abstract
【目的】
近年ではタイムラプス動画を用いた経時的な胚観察が可能となり,以前の定点観察では見逃していた情報を確認できるようになった.そこで当院では,従来の評価法の見直しを目的に様々な動態解析を実施し,多核由来胚と発生の早い胚において胚盤胞形成率が低下することを報告した(水本ら,2019年日本A-PART 学術集会).しかし,形態良好胚盤胞においては妊娠率に差はみられず,現時点で移植時の胚選択をする上で最も有効な基準は胚盤胞の形態である.胚盤胞は胚齢によって臨床成績に差があることが知られている一方,それを移植時の胚選択に反映させる明確な基準はない.そこで本検討では,胚選択の精度向上のため胚齢が異なる同じ形態評価の胚移植成績を比較し, Day5胚盤胞の成績を基準としたDay6胚盤胞の評価方法を検討した.
【方法】
当院で2018年6月以降に採卵を実施し,2021年4月までに単一融解胚盤胞移植を受けた初回治療患者958症例(妻平均年齢35.34±3.76歳)を対象とした.Day5またはDay6で得られた胚盤胞を形態学的評価のみでA,A’(Good 胚),B,B’(fair 胚),C(poor 胚)の5段階で評価し,ガラス化凍結を実施した.その後,形態評価順に移植胚を選択して単一融解胚盤胞移植を行い,胚齢と形態評価ごと
の移植あたりの継続妊娠率を比較した.
【結果】
妻年齢はDay5胚盤胞移植群(以下D5)が35.29±3.78歳,Day6胚盤胞移植群(以下D6)が35.43±3.67歳で有意差はなかった.移植あたりの継続妊娠率はD5(49.4 %,351/711)がD6(34.8 %,86/247)より有意に高かった(p<0.001).形態評価別では,D5においてA が最も高く,評価が下がるにつれて成績も低下した.形態評価がA’の胚ではD5 がD6 より有意に高い値を示した(55. 6 %
vs42.7%,p<0.05).他のグレードについても同じ形態評価ではD5がD6と比較して同等かそれ以上の値を示し,D6-AとD6-A’はD5-Bと同等であった.また,D6の評価中等度であるB,B’はD5-B’,Cと同程度の成績であり,D6-Cは11.8%と最も低かった.
【結論】
同じ形態評価の胚でも,D5はD6と比較して高い継続妊娠率を示した.さらにD5において,形態的に上位のD6より高い継続妊娠率を示したケースも確認できた.D6Good 胚は実際の評価より1ランク下げるなど,形態学的評価と同等に胚齢も移植時の胚選択をする上で重要であることが示唆された.今後は,胚盤胞の形態と胚齢を総合的に評価することで初回胚盤胞移植後の臨床成績向上がみられる
か検討を重ねる必要がある.