O-5 プロゲステロンとエストラジオールによる精子超活性化運動と体外受精の調節
2023年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:藤ノ木 政勝
獨協医科大学医学部先端医科学統合研究施設実験動物センター
Abstract
「目的」哺乳類精子は受精能獲得という質の変化を経なければ卵と受精できない。受精能獲得を経た精子は超活性化運動という独特の運動様式を示す様になる。ハムスター精子においてプロゲステロンは超活性化運動の惹起を促進し、エストラジオールは促進分を抑制することを報告している。超活性化運動は受精能獲得と連動している事から、プロゲステロンとエストラジオールによる超活性化運動の調節に伴って受精が調節されるのか、マウスを用いて検討を行った。
「方法」モデル動物としてICRマウスを用いた。培地にmTALP溶液を使用し、精子受精能獲得および体外受精を実施した。運動解析はビデオ位相差顕微鏡を用いて行い、体外受精は通常のマウス体外受精法のプロトコールで行った。
「成績」マウス精子の超活性化運動はプロゲステロンによって惹起の促進が起こり、エストラジオールによって促進が抑制された。プロゲステロンは20 ng/mlで最もよく惹起の促進を示し、エストラジオールはプロゲステロンの濃度の約1/1000の濃度(20 pg/ml)を境にこれより濃い濃度の時に抑制し、薄い濃度の時には抑制をしなかった。次に体外受精を行ったところ、超活性化運動の惹起の促進及び促進の抑制と連動する様に、プロゲステロンにより体外受精の成績は向上し、エストラジールによって向上が抑制された。
「結論」今回の検討からプロゲステロンは超活性化運動の惹起を促し、さらに体外受精での受精の向上も促すことが分かった。そして、エストラジオールはこれらプロゲステロンの作用を抑制していた。プロゲステロンとエストラジオールの作用は濃度依存的であったことから、生体内においてプロゲステロンとエストラジオールの分泌量の変化に伴った配偶子レベルでの受精調節が起こっている可能性が考えられた。