Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-4 小前核を含む3前核由来胚盤胞の 染色体解析結果から見た臨床利用

学術集会 一般演題(口頭発表)

2022年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:水田 真平1 ・2)・李 優奈2)・松林 秀彦2)・石川 智基2)・柴原浩章1)

1) 兵庫医科大学医学部産科婦人科学講座
2) リプロダクションクリニック大阪

Abstract

【目的】
3前核(3PN)胚は3倍体のリスクが高いとされ一般的に胚移植に用いられない.しかし3PN 胚には正常2倍体も存在し,特に小前核を含むいわゆる2.1PN由来の胚盤胞の染色体解析では85.7 〜 100%が2倍体とされ,正常2倍体胚の移植で健児が得られた報告もある.今回,小前核を含む3PN由来胚盤胞の2倍体頻度とその予測が可能かどうか調べるため,染色体および形態学的解析を行った.
【方法】
2019年7月から2022年6月にリプロダクションクリニック大阪で,小前核を含む3PNが確認された胚盤胞80個(cIVF 9個,ICSI 71個)を対象とした.対象胚の妻平均年齢は39.2±4.8歳(22-47歳),平均最小PN 直径12.7±2.8μm(8.5-19.7μm)であった.倒立顕微鏡下で内細胞塊(ICM)と栄養外胚葉細胞(TE)に分離後にNGS およびSNP 解析を用いた染色体解析を行い,タイムラプス画像解析による胚発生評価との相関を解析した.本研究は両施設における倫理委員会の承認を得て,廃棄胚としての研究について患者から同意を得た上で実施した.
【成績】
3倍体が8.7%,2倍体が91.3%(正常18.7%,異数体61.3%,モザイク11.3%)であった.ICMを採取できた胚は64個で,ICMとTEの
解析結果の不一致は15.6%に認めたが主にモザイク率の違いであり,3倍体と正常2倍体の結果は全て一致していた.3倍体,正常2倍体,異数体, モザイクの最小PN 直径はそれぞ15.2±4.1μm(8.5-
19.7μm),12.3±2.1μm(9.2-16.1μm),12.8±2.8μm(8.5-18.9μm),11.4±2.1μm(9.7-16.3μm)で3倍体がやや大きい傾向を認めた.妻年齢はそれぞれ41.1±5.1歳(32-47歳),36.0±6.3歳(22-44歳),40.6±3.5歳(31-46歳),35.2±3.6歳(29-39歳)で異数体が正常とモザイクより有意に高く,3倍体も高い傾向であった.受精方法の違い,異常分割頻度や胚発生速度,胚盤胞グレードは差を認めなかった.
【結論】
小前核を含む3PN由来胚盤胞の約9割が2倍体で既報と同等であった.また約2割に正常2倍体を確認できた.特に最小前核のサイズが小さい場合に2倍体が多く,妻年齢が若い場合に正常2倍体とモザイクの割合が高かった.本結果より,両指標を基に胚移植に使用でき得ることが示されたが,8.5μm(37歳)の非常に小さい前核を有した胚盤胞からも3倍体を認めており,胚移植の実施は慎重に進める必要があり,染色体倍数性解析が推奨されると考えている.

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