Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-34 精子運動能とDNA 断片化は精子調整方法と調整液の抗酸化物質有無で差があるか?

学術集会 一般演題(口頭発表)

2021年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:小牟禮 志帆・岸本 匡史・水田 真平・山口 耕平・松林 秀彦・石川 智基

リプロダクションクリニック大阪

Abstract

【目的】
近年,精子調整法や調整用培養液の違いでARTにおける治療成
績が異なる事が報告されているが,経時的な精子運動性の変化や,
DNA 断片化に関するデータは乏しい.今回,Vitrolife 社の抗酸化
物質含有培養液Gx-IVF( Gx群)および不含有のG-IVF( G群)を
用いて,2層密度勾配遠心法(DGC)およびswim up 法(DGC +
swim up)の,2種の精子調整方法を用いた後の精子運動性と精子
DNA 断片化率(SDF)について経時的に比較した.
【方法】
2021年4月から7月に当院で精液検査を行った患者のうち,研究同
意の得られた11名の射出精液を対象とした.精液を液化後,運動性
検査およびSDF 解析を行った.精液を半量ずつ2群に分け,Gx-IVF およびG-IVFそれぞれで希釈した2層密度勾配液(90 %,45%)にて遠心処理し,各培養液で遠心洗浄した.そのうち半量は運動性およびSDF 解析を行い(DGC 群),残り半量は30分間swim upさせ同様の解析を行った(DGC+S 群).各処理後の検体を6.0%CO2,5.0% O2で約18時間静置し,同様の解析を行い(DGC+O. N. 群,DGC+S+O.N. 群),3時点における解析結果を比較した.運動性はSperm Motility Analysis System (DITECT 社),SDFはフローサイトメトリー(BECKMAN COULTER社)を使用した.
【結果】
原精液は運動率63.4%,直線速度20.0μm/s,DGCの運動率はGxとGでそれぞれ85.9と87.8%,直線速度は33.0と33.5 μm/s,DGC+S の運動率はそれぞれ95.4と96.4%,直線速度は38.3と40.1 μm/s,DGC O.N.の運動率はそれぞれ81.7と78.6%,直線速度は28.8と27.0 μm/s,DGC+S O.N.の運動率は94.1と92.8%,直線速度は41.8と40.2 μm/sであり,運動率,直線速度ともに調整後に上昇し,DGC+S 群がDGC 群より有意に高かった.SDFは原精液が13.7%,DGCはGxとGでそれぞれ12.3と12.2%,DGC+Sは3.6と4.2%,DGC+O.N.は11.9と12.3%,DGC+S+O.N.は2.6と3.3%で,DGC+S 群がDGC 群より有意に低かった.抗酸化物質の有無による比較では運動性とSDFともに有意差は認めなかったものの,時間経過で良好な傾向が見られた.
【考察】
2層密度勾配遠心法にswim up 法を加えた精子調整法が,運動性,
DNA 断片化率ともに良好であり,ART使用に望ましいことが示唆さ
れた.抗酸化物質含有の培養液は運動性とDNA状態の維持傾向を認め,活性酸素種産出を抑制させたことで精子を良好な状態に保つことが出来たのではないかと考えられた.

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