Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-30 精液持参の割合が増えた コロナ禍における保温容器の効果

学術集会 一般演題(口頭発表)

2021年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:林 智菜実1)・佐藤 学1)・中岡 義晴1)・森本 義晴2)

1)IVF なんばクリニック, 2)HORAC グランフロント大阪クリニック

Abstract

【目的】
新型コロナウイルス感染症の影響により院内への患者来院数を制
限するため,精液持参を推奨する施設が増えた.しかし,精液持参
の場合は外部環境の影響,とくに外部温度によって運動性に影響す
る可能性が高い.また,四季のある日本国内では地域,季節によっ
て温度変動が大きく,とくに冬は運動性が下がることを以前に報告している.その影響の一つに運動精子の減収による体外受精から顕微
授精への変更が挙げられる.この運動性低下を防ぐために保温容器
を使用し,運搬することで院内採取での精液所見と同等の状態に保
つことができたことも報告した.そして現在,感染症対策は継続せ
ねばならず,精液持参の割合は増加している.そこで,感染症対策
前後の期間で保温容器の効果がみられるか検証した.

 

【方法】
2018年12月から2019年11月までの感染症対策前(529周期,前期),2019年12月から2020年11月までを感染症対策後(447周期,後期)とした.対象患者の精液所見は総精子濃度20.0×106/ml かつ運動率40%以上と限定した.そして12月- 2月(冬),3- 5月(春),6-(8 夏),9-11月(秋)と分けた.保温容器(サーモス,JBU-380)を用いて運搬した体外受精予定の189周期(前期)と288周期(後期)の総精子濃度,運動率,SMIならびに密度勾配遠心とSwim-up 後の回収総精子濃度,運動率を比較した.
【結果】
精液持参割合は後期で上昇した(35.7 vs. 4.4, P<0.01).春以外
のSMIは後期が低下し,秋の総精子数も後期で低下したが,調整後の回収総精子濃度(9.5-16.4×106/ml),運動率(97.2-99.2)は季節ごとに変動があるものの体外受精実施に影響を及ぼす数値ではなかった.
【考察】
感染症対策のため自宅からの持参精液の割合はおよそ2倍にまで増えた.温度変化による影響を防ぐために以前から保温容器を用いる取り組みをしてきたことが功を奏すかどうかを検討し,一部精子パ
ラメータでの影響を認めたが体外受精が顕微授精に変更になるほど
の大きいものではなく,一定の効果を示していることが明らかとなった.

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