O-3 ヒトGV期卵における核仁周囲の染色体集積と卵細胞質面積を指標とした卵核胞崩壊(GVBD)予測
2022年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:浅間 勇人1)・橋爪 淳子2)・田﨑 秀尚1)・3)・上林 大岳2)・道倉 康仁2)・大月 純子1)・3)
1)岡山大学大学院環境生命科学研究科
2)金沢たまごクリニック
3)岡山大学生殖補助医療技術教育研究センター
Abstract
【目的】
調節卵巣刺激周期に採卵された卵の約10-15%は未成熟なMI 期やGV 期卵であることが知られている.MI 期卵の場合,数時間の追
加培養後にMII 期に到達した卵は当日のICSI が可能となるが,GV
期卵の場合はMII 期到達までに時間を要す.またGV 期卵には卵核
胞崩壊(GVBD)が起こらず核成熟が停止する卵が存在し,核成熟の
タイミングが不定かつ受精後の胚発生率が低いことからGV 期卵の多
くは廃棄となり,GV 期卵の追加培養後にICSIを施行した報告は少ない.ヒトGV期卵の核仁周辺には染色体の集積( peri-nucleolar
chromosome accumulation: PNCA)が存在する(Otsuki et al.,
RBMO, 2007)ことから,本研究ではPNCAと卵細胞質面積を指標
としGVBDを予測することを目的とした.
【方法】
2021年4月15日から2022年4月30日の期間にEmbryoScope Flex
(VitroLife)にてタイムラプス観察を行ったICSI 症例のうち,GV 期
卵を有した124症例(PCO 症例除外)を対象とした. 採卵時にGV 期
であった166個におけるPNCAとの関連を患者年齢,使用した2種の
培養液を交絡因子としロジスティック回帰分析を行った.また,細胞質面積計測が可能であった129個のGV 期卵母細胞において,
PNCA が起きる条件をROC曲線解析により算出した.なお,本研究は岡山大学のIRB承認(研2205-011)を得て行った.
【成績】
PNCA(+)のGV 期卵148個のGVBD率とMII 期到達率はそれぞれ
92.6%( 137/148)と 82.4%( 122/148)であり,PNCA(-)のGV期卵18個ではそれぞれ11.1%( 2/18)と 5.6%( 1/18)であり,多変量解析の結果,PNCA(+)のGV 期卵におけるGVBD率,MII期到達率は共に有意に高率であった(p<0.001).また,PNCA(+)となる卵細胞質面積のカットオフ値は9611μ㎡であり(AUC: 0.757),卵細胞面積が9611μ㎡以上の場合のPNCA率92.7%(102/110)に対し,卵細胞面積が9611μ㎡未満の場合のPNCA率57.9%(11/19)は有意な低率を示した(p<0.001).
【結論】
本研究において,PNCA(+)のGV 期卵はGVBD後MII 期に到達し,翌日のICSI 施行まで繋がる可能性が高いことが判明した.また,採卵時に細胞質面積が9611μ㎡以上のGV 期卵は高率にPNCA(+)であることから,PNCAとGV 期卵母細胞質成熟度との関連が示唆された.