O-27 凍結融解単一胚盤胞移植後に品胎妊娠を認めた2例
2021年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:平田 貴美子・栗原 甲妃・藤井 楓・石橋 里恵・藤岡 美苑・林 綾乃・清水 純代・中塚 麻里子・泉 陽子・中西 桂子・後藤 栄
後藤レディースクリニック
Abstract
【目的】
2008年に日本産科婦人科学会によって単一胚移植が提言されたこ
ともあり医原性の多胎妊娠は減少している.単一胚移植の割合は
2007年の52.5%から2015年の80.1%へと増加し,それに伴い多胎の割合も2007年の10.5%から2018年の2.9%へと減少してきている.しかし,単一胚移植を行っているにも関わらず,多胎妊娠の症例も散
見される.今回,我々は凍結融解単一胚盤胞移植後に品胎妊娠となった症例を経験したので報告する.
【方法】
当院にて,2011年7月から2021年5月までに凍結融解単一胚盤胞移
植を施行した4409例のうち多胎妊娠は44例(1.0%)であった.多胎
妊娠の内訳は,MD 双胎26 例(59. 1 %),DD 双胎12 例(27.3%),MD/MM 双胎3例(6.8 %),MM 双胎1例(2.3 %),品胎症例2例(4.5%)であった.症例1は,36歳1妊0産.卵管因子のためGnRHアゴニスト(ショート)法にて採卵,cIVFを施行後培養し,全胚凍結を施行.次々周期にホルモン補充周期にてDay5 G4AAで凍結した胚盤胞を補助孵化療法(AHA)を施行後,経腹エコー下に移植した.その結果,子宮内に2個の胎嚢を認め,内1個はMD双胎であり,二絨毛膜三羊膜品胎妊娠となった.妊娠経過は問題なかったが,本人希望のためMD双胎の減胎術を施行し1児を生産した.症例2は,36歳0妊.男性因子のためGnRHアンタゴニスト法にて採卵,ICSIを施行後培養し,全胚凍結を施行.次々周期に自然排卵周期にてDay5 G4ABで凍結した胚盤胞をAHAを施行後,経腹エコー下に移植した(移植周期での性交はなかった).その結果,症例1と同様に,子宮内に2個の胎嚢を認め,内1個はMD双胎であり,二絨毛膜三羊膜品胎妊娠となった.妊娠経過は問題なかったが,本人希望のためMD双胎の減胎術を施行し現在妊娠継続中である.
【考察】
当院における凍結融解単一胚盤胞移植後に多胎妊娠となった症例
の割合,その内訳は既報告の症例とほぼ同等であった.ARTでの多胎妊娠を増加させる要因としては,ICSIやAHA等の胚操作,胚盤胞への長期培養,凍結融解胚移植などが報告されている.本研究は,すべて採卵後5日目に胚盤胞凍結を施行し胚移植をした症例であり,かつ全ての胚にAHAを行っている症例である.また,多胎妊娠を生じた症例中のICSIの割合も25%(11/44例)であり,ICSIの割合が高いとも言えない.単一胚移植後に多胎妊娠になる要因ははっきりとは分からないが,多胎,特に品胎を生じると母体,育児への負担より人工妊娠中絶,あるいは減胎術を選択する可能性があり,単一胚移植時にも多胎リスクを十分に説明する必要があると思われる.