Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-27 凍結胚盤胞の移植時における回復率が妊娠率、出産率、出生児へ与える影響の比較検討

学術集会 一般演題(口頭発表)

2023年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:市田 怜奈・大久保 毅・宮林 里菜子・樋口 藍・樋口 謙太・松尾 涼子・田口 智美・恩田 知幸・林 輝明・大見 健二・瀬川 智也

新橋夢クリニック

Abstract

【目的】ARTにおける凍結胚盤胞移植の割合は増加しているが、融解後の胚盤胞評価には未だ明確な基準はない。凍結前の基準で良好とされる胚盤胞であっても、融解後に胞胚腔が十分に再拡張しない胚盤胞も認め、それらの着床・妊娠・出生児への影響が懸念される。2019年日本A-PART 学術講演会にて我々は、移植直前時の胞胚腔拡張が良好な胚盤胞ほど妊娠率が高くなることを報告した。今回我々は、孵化胚盤胞を凍結する直前に行う収縮処理時の胚盤胞径から見た、移植時の胚盤胞径の回復率における妊娠成績および出生時身長と体重について比較し、融解後の胚盤胞評価の基準になるか検討した。
【方法】当院で2016年10月から2019年10月にかけて、人工的孵化処理を施した孵化胚盤胞に対してガラス化凍結を施行し、融解後に移植まで至った胚盤胞2506個を対象とした。全症例に対して、ガラス化凍結を施行する直前でピペッティングによる収縮処理を行なった。収縮処理後である凍結前胚盤胞および、融解から1時間以上の回復培養を行った移植直前胚盤胞、それぞれの長径と短径2点を測定して平均胚盤胞径を算出した。凍結前より移植前の平均径が小さい胚盤胞を回復率100%未満群(n=164)、凍結前より移植前の平均径が大きい胚盤胞を回復率100%以上群(n=2342)とした。両群における臨床的妊娠率(胎嚢確認)、出産率、在胎週数、出生児の体重および身長について比較検討した。
【結果】回復率100%未満群および回復率100%以上群における臨床的妊娠率は、それぞれ25.6%(42/164)、46.8%(1095/2342)であり(p<0.01)、出産率はそれぞれ13.4%(22/164)、32.7%(767/2342)であった(p<0.01)。また、在胎週数はそれぞれ37.8±2.7週、37.8±2.2週であり両群間に有意差は認められなかった。同様に出生児の平均体重はそれぞれ3006±610g、2977±504g、平均身長はそれぞれ48.8±3.4cm、48.8±3.1cmであった。出生児の平均体重と平均身長についても有意差は認められなかった。
【結論】今回の結果により凍結胚盤胞の移植成績向上には、移植時における胚盤胞径の大小だけでなく、収縮処理時の胚盤胞径から移植前胚盤胞における回復度も重要と分かった。収縮処理時の胚盤胞径より移植前の胚盤胞径が小さい胚盤胞における妊娠率は低下するものの、妊娠継続する症例もある。また、それらの出生児の体重と身長に影響はないことが明らかとなった。よって、移植前胚盤胞の胚盤胞径が収縮処理時の胚盤胞径より小さい胚において、妊娠率は顕著に低下するものの、健児出生が見込めるため移植を回避するという結論には至らなかった。

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