Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-24 抗酸化物質添加培地の使用が胚のiDAScoreに及ぼす影響

学術集会 一般演題(口頭発表)

2023年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:影山 美桜・水本 茂利・長尾 洋三・渡辺 瞳・田中 啓子・小柳 沙織・奥田 紗矢香・後藤 美緒・伊賀 淑穂・大坪 可奈子・蔵本 武志

蔵本ウイメンズクリニック

Abstract

目的
iDAScore(VitroLife) は人工知能を用いた胚評価法の一つで、胚の画像分析により、1.0-9.9のスコアで評価するシステムである。
また、生殖補助医療において体外培養における酸化ストレスは、フラグメンテーションやアポトーシスを誘起し、胚の発生能を低下させることが指摘されている。当院ではこれまでに抗酸化物質(N-アセチルシステイン、アセチル-L-カルニチン、α-リポ酸)添加により35歳以上の症例において臨床妊娠率が向上する事を報告している。このような抗酸化物質添加培地の有効性を示す報告はあるものの、iDAScoreに及ぼす影響は明らかでない。
そこで、本研究では抗酸化物質(Ao)添加の有効性とiDAScoreの関係性について後方視的に検討した。
方法
2018年8月から2019年12月まで当院にてAo添加培地使用に対するインフォームドコンセントの下採卵を実施した症例を対象とし、単一融解胚盤胞移植を行った247周期について検討した。
卵子はランダム表に基づき、対照区及びAo区に分け、媒精、胚培養を行った。精子処理は精液を半量ずつ対照区及びAo区に分け、密度勾配法により処理を行った。
単一融解胚盤胞移植を行った対照区 (113周期)及びAo区(134周期)の胚における臨床妊娠率及びiDAScoreを後方視的に調査すると共に、4つの年齢群、A群25-32歳(30.2±1.6)、 B群33-34歳(33.7±0.5)、C群35-37歳(36.0±0.9)、D群38-40歳(38.8±0.7)に分け比較した。
成績
対照区及びAo区における臨床妊娠率は53.1%、59.7%であり、有意な差は見られず、iDAScoreの平均値はそれぞれ、8.50±1.04、8.30±1.24であり有意な差は見られなかった。
また、年齢群ごとの臨床妊娠率は対照区及びAo区でそれぞれA群(70.6%,54.8%)、B群(61.7%,65.0%)、C群(41.9%,52.5%)、D群(27.8%,65.6%)となり、D群において有意に高かった。(P<0.05)
一方、iDAScoreの平均値は対照区及びAo区でそれぞれA群(8.67±0.92,8.27±1.22)、B群(8.39±0.88,8.46±1.24)、C群(8.34±1.30,8.28±1.24)、D群(8.67±0.92,8.27±1.41)となり、いずれの区間においても有意な差は見られなかった。
結論
Ao添加はiDAScoreに影響しなかった。このことから、高齢患者におけるAo添加の有効性は発生動態ではなく、生理学的変化によるものであると考えられる。

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