O-23 Neurotensin は ERK1/2 系 の持続的リン酸化を促進し排卵を誘起する
2020年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:岡本 麻子1・2) ・島田 昌之3) ・山下 泰尚1)
1)県立広島大院総合学術研究科 2)倉敷芸術科学大生命科学部 3)広島大院統合生命科学研究科
Abstract
【目的】
LHサージ刺激後の顆粒膜細胞が放出するEGF-like factorは卵丘細胞のEGF受容体を介してERK1/2を活性化し排卵を誘導する.当研究グ ループでは,野生型マウスと卵巣特異的Erk1/2欠損マウスの排卵期顆粒 膜細胞におけるアレイデータベースの比較解析から,ERK1/2依存的に発現する分泌因子の探索を行った.その結果,神経ペプチドのNeurotensin (NTS)を見出したことから,本研究ではNTSとその受容体(NTSR1)の発現と機能解析を行った.
【方法】
実験1: PMSG/hCGを投与した 3週齢のC57BL/6雌マウスから卵巣, 顆粒膜細胞(GC), 卵丘細胞(CC)を各時間に回収し,NTS および NTSR1の遺伝子とタンパク質発現, 局在を調べた.実験2: マウスに PMSG/hCGまたは hCG+SR(NTSR1阻害剤)投与し,排卵数,産仔数,黄体数を調べた.実験3: PMSG/hCGまたは PMSG/hCG+SRを投与 したマウスからCCを回収し,経時的ERK1/2リン酸化パターンを比較した.実験4: PMSG/hCGおよび PMSG/hCG+SRを投与したマウス から GC および CCを回収し,GC の EGF-like factors(Areg,Btc, Ereg,Nrg1)とCCのErBbs(Erbb1,Erbb2,Erbb3,Erbb4)の発現 を比較した.
【結果】
実験1: Nts mRNAはhCG刺激前まではGCとCCで低値であったが, hCG 刺激4h 後以降に両細胞で有意に上昇したが,Ntsr1 mRNAは GCとCCで恒常的に発現していた.NTS 量は排卵刺激後に増加し, NTS,NTSR1タンパク質も排卵刺激後の GC,CCに局在していた. 実験2: 排卵数, 産仔数, 黄体数は SR 投与により減少した.実験3: hCG 投与したCCでは排卵時まで継続的にERK1/2のリン酸化が認め られたが,hCG+SRでは継続的なERK1/2リン酸化は認められなかっ た.実験4: GCでのEregとNrg1,CCのErbb2とErbb3 mRNA発現 はSRにより完全に抑制された.
【考察】
本研究の結果,NTSはGCのEGF-like factorのうちEREGとNRG1, CCのEGF受容体のうちErBb2とErBb3の発現をそれぞれ亢進し,排卵期間中の継続したERK1/2のリン酸化を誘導する因子であることが明らか になった.さらに,この結果,受精能を有する卵の成熟と排卵が誘導され ると考えられた.