O-21 分割期に認められる多核を有する割球の数が胚盤胞到達率に及ぼす影響
2023年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:臼田 薫1)・高橋 瑞穂 1)・服部 裕充 1),2),3),4)・長浦 聡子1)・小泉 雅江 1)・戸屋 真由美1)・五十嵐 秀樹1)・京野 廣一 1),2),3),4)
1)京野アートクリニック仙台,2)京野アートクリニック高輪,3)京野アートクリニック盛岡,4)日本卵巣組織凍結保存センター(HOPE)
Abstract
【目的】本研究では3、4、5細胞の時期における多核の出現と多核を有する割球の数が胚盤胞到達率に及ぼす影響を検討した。
【方法】2022年4月から2023年5月までに採卵を行った、922症例1428周期を対象とした。PGT、凍結精子、人為的卵子活性化症例は対象外とした。正常受精由来胚について、3~5細胞のそれぞれの時期における多核の出現と多核を有する割球数別の胚盤胞到達率、臨床成績を比較した。統計解析はχ二乗検定を用い、Bonferroni法で調整を行った。p<0.05を有意差ありとした。
【成績】対象の妻平均年齢は38.4±4.8歳であった。正常受精卵5872個のうち、3細胞期以降に多核が観察されたものは1282個で多核率は21.8%(1282/5872)、受精方法別ではC-IVF:18.2%(331/1821)、ICSI:23.5%(951/4051)で、ICSIで有意に高かった。多核の出現時期は、3~10細胞期で確認されたが、3~5細胞期での出現が93.1%を占めていた[3細胞期:30.3%(389/1282)、4細胞期:48.3%(619/1282)、5細胞期:14.5%(186/1282)]。正常受精あたりの各時期の胚盤胞到達率は、非多核胚63.5%(1570/2474)、3細胞期19.0%(74/389)、4細胞期47.5%(294/619)、5細胞期40.9%(76/186)であり、非多核胚と3~5細胞期多核胚、3細胞期多核胚と4、5細胞期多核胚の間にそれぞれ有意差が認められた。次に、多核を有する割球数別の胚盤胞到達率は、3細胞のうち1細胞が多核を有する群(以下1/3群)の場合26.3%(49/186)、2/3群15.6%(20/128)、3/3群6.7%(5/75)で1/3群vs3/3群で有意差が認められた。4細胞期では1/4群57.5%(233/405)、2/4群28.8%(40/139)、3/4群29.8%(14/47)、4/4群25.0%(7/28)で1/4群とその他の群にそれぞれ有意差が認められた。5細胞期では1/5群46.8%(51/109)、2/5群46.0%(23/50)、3/5群0.0%(0/16)、4/5群12.5%(1/8)、5/5群33.3%(1/3)で1/5群vs3/5群、2/5群vs3/5群でそれぞれ有意差が認められた。さらに、非多核胚537周期、3~5細胞期多核胚54周期における凍結融解胚盤胞移植の移植あたりの妊娠率(GS)は、49.5%(266/537)、40.7%(22/54)、妊娠継続率(12週以降までの妊娠継続)は、38.9%(209/537)、27.8%(15/54)、流産率(流産/妊娠あたり)は21.4%(57/266)、31.8%(7/22)であり、いずれも有意差を認めなかった。
【結論】受精方法が多核の出現に影響することが示唆された。また、3細胞期以降に多核が認められると胚盤胞到達率が低下するが、4細胞期以降では多核を認めない細胞が少なくとも3細胞以上あれば影響が少ないことが示唆された。多核由来胚盤胞の移植は臨床成績に影響しない可能性があるが、症例数を増やしてさらなる検討が必要である。