Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-20 SMASより算出されたヒストグラムからIVFにおける低受精率症例の予想とその有効性

学術集会 一般演題(口頭発表)

2022年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:内堀 翔1)・中野 達也1)・佐藤 学1)・中岡 義晴1)・森本 義晴2)

1) I VF なんばクリニック
2) HORAC グランフロント大阪クリニック

Abstract

【目的】
体外受精における受精方法の適切な選択は,受精率低下を防ぐ
ことにつながる.受精方法の選択に基準はなく,施設独自に設定していることが多いため,精子濃度や運動率を指標に決められることが一般的である.しかし精子濃度や運動率だけでは受精率の予測には不十分であり,精子単位での運動性を評価するためには目視での評価には限界がある.そこで,精子運動解析装置(SMAS, ディテクト社)を用いることで,計測データから低受精率となりうる症例を予想できるのではないかと考えた.本検討では,採卵当日に採取された精液をSMAS において計測し,算出されたパラメーターから受精率の予想因子になり得る条件を後方視的に検討した.
【方法】
検討1. 2021年1月から2022年6月に採卵を行い,c-IVF 予定で精
液を調整・受精操作をした症例のうち,成熟卵数が5個以上であり,受精率が50% 未満となった27症例(低受精率群)と受精率上位27症例(高受精率群)の計54症例を対象とした.群ごとにSMASから算出されたパラメーターから直線速度,曲線速度,平均速度,直進性,直線性,曲線性,頭部振幅,頭部振動数についてヒストグラムを描き,低受精率群と高受精率群における精子の分布を比較した.検討2. 2022年7月に採卵を行い,c-IVF 予定で精液を調整・受精操作をした症例のうち成熟卵数が5個以上の30症例を対象とした.検討1で得た結果から分布に違いが見られたパラメーターにおいて基準を設定し,症例を低値群と高値群に分け,受精率,胚盤胞形成率を比較した.
【成績】
結果1. 各パラメーターのうち,直線速度,平均速度,曲線性,
頭部振動数においては低受精率群,高受精率群ともに分布図に違
いはなかった.一方,曲線速度,直進性,直線性,頭部振幅にお
いて,割合が高い分布が異なった.結果2. 曲線速度(40μm/s 未満v.s. 40μm/s 以上),直進性(0.6未満v.s.0.6以上),直線性(0.4未満v.s.0.4以上),頭部振幅(0.7μm 未満v.s. 0.7μm 以上)をそれぞれ低値群,高値群に分け,受精率,胚盤胞形成率を比較し,直進性,直線性を群分けに用いた比較では受精率,胚盤胞形成率に差はなかった.一方,曲線速度を群分けに用いた比較では受精率(53.8% v.s. 86.4%),胚盤胞形成率(24.2% v.s. 61.6%)に差を認めた.また頭部振幅を群分けに用いた比較でも受精率(63.2% v.s.88.2%),胚盤胞形成率(35.1% v.s. 64.0%)に差を認めた.
【結論】
精子濃度や運動率の数値以外に原精液の曲線速度,頭部振幅
の分布の割合から低受精率となる可能性がある症例を予想できることが示唆された.目視の評価では得ることができないパラメーターを活用することで,受精方法選択の一助になることが期待できる.

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