Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-20 卵子の低成熟率症例の要因と培養成績,臨床成績に与える影響

学術集会 一般演題(口頭発表)

2021年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:高橋 瑞穂1)・青野 展也1)・2)・中條 友紀子1)・服部 裕充1)・小泉 雅江1)・戸屋 真由美1)・五十嵐 秀樹1)・京野 廣一1)・2)・3)

1) 京野アートクリニック仙台, 2) 京野アートクリニック高輪, 3) 京野アートクリニック盛岡

Abstract

【目的】
卵巣刺激後の採卵された卵子には未成熟卵子が含まれる場合があ
り,大部分が未成熟卵子という症例が存在する.本検討では卵巣刺
激症例における低成熟率の要因と低成熟率症例の培養成績・臨床成績を明らかとすることを目的とした.
【方法】
2013年1月から2020年6月に採卵をし,採卵数4個以上かつICSI
を施行した39歳以下を対象とした.卵巣刺激はGnRH アンタゴニストにて行い,トリガーとしてGnRH アゴニスト(GnRHa)単独,hCG単独,Dual trigerのいずれかを投与後,35-38時間後に採卵を行った.ICSI施行前の卵丘細胞除去後の卵子を成熟率別に51% ≦(high)群(1005周期)と50% ≧(low)群(171周期)に分け,患者背景(年齢,AMH値,採卵数,不妊原因),培養成績,臨床成績をそれぞれ比較検討した.統計はボンフェローニの多重比較にて行い,p<0.05で有意差ありとした.
【結果】
high 群とlow 群それぞれの年齢(35.2±3.3歳vs. 35.0±3.4歳),
AMH 値(2.75ng/ml vs. 3.15ng/ml)に有意差は認められなかったが,採卵数ではhigh群がlow群より有意に多かった(9.4±4.9 vs. 8.5
±4.9).また採卵決定時のE₂値はhigh群がlow群より有意に高かっ
た(1506.6±934.7 vs. 1359.9±1043.4).不妊原因では,男性因子
がhigh 群で有意に多かった(49.0% vs. 37.4%).またトリガーの種
類では,high 群でhCG 単独投与の割合が有意に多く(47.4% vs.
39.8%),さらにゴナドトロピン(Gn)総投与量はhigh 群がlow 群より有意に多かった(1922.8±665.8 vs. 1781.6±642.0).培養成績で
は,受精率がhigh 群でlow 群より有意に高く(73.2% vs. 67.6%),
3PN 率ではhigh 群がlow 群より有意に低い結果となった(2.7% vs.
4.3%).胚盤胞到達率では有意差は認められなかった.臨床成績に
おいては妊娠率,出産率,流産率ともに有意差は認められなかった.
【考察】
卵子の成熟率は受精率に影響を与えることが示唆された.未成熟卵子が多い症例では,卵子の核成熟と細胞質成熟の非同期性が起こるとされており,このことが受精率に影響したものと考えられる.またGn投与量が多く,採卵決定時のE₂値が高値であることが,成熟卵子獲得に重要である事が示唆された.この結果から,未熟卵子が多かった症例ではGn 投与量を増やし,充分なE2値に達するまで卵胞を発育させることで成熟卵子数増加が可能かもしれない.今後は,成熟率向上のために,トリガーから採卵までの時間,採卵から卵丘細胞除去までの時間などについて検討が必要である.

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