O-20 凍結融解胚盤胞移植における回復培養後の胚の拡張性と臨床成績との関係
2023年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:門間 里奈1)・服部 裕充 1),2),3),4)・高橋 瑞穂 1)・小泉 雅江 1)・長浦 聡子1)・戸屋 真由美1)・五十嵐 秀樹1)・京野 廣一 1),2),3),4)
1)京野アートクリニック仙台,2)京野アートクリニック高輪,3)京野アートクリニック盛岡,4)日本卵巣組織凍結保存センター(HOPE)
Abstract
【目的】凍結融解胚盤胞移植における回復培養後の胚の拡張性と臨床成績の関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】2018年1月~2022年12月に単一凍結融解胚盤胞移植を施行した39歳以下の症例を対象とし、凍結時のGardner分類における発育段階が4以上の胚盤胞について、良好胚(BB以上)と不良胚(AC/BC)に分けて検討した。対象胚は全て融解後に透明帯開口法を施行し、回復培養は4~5時間行った。回復培養後に胞胚腔が拡張した胚をA群(良好胚193症例202周期、不良胚103症例109周期)、胞胚腔が拡張しかつGradeが上昇した胚をB群(良好胚1080症例1453周期、不良胚429症例515周期)、胞胚腔が拡張しなかった胚をC群(良好胚85症例91周期、不良胚66症例67周期)とし、それぞれの妊娠率(移植当たりの胎嚢が確認された割合)、妊娠継続率(移植当たりの妊娠12週以降まで妊娠が継続した割合)、流産率(妊娠当たりの流産が確認された割合)についてχ2検定を用いて比較した。P<0.05を有意差有りとした。
【成績】各群の移植時の妻平均年齢は、良好胚でA群34.9±3.3歳、B群35.1±3.1歳、C群34.9±3.4歳、不良胚でA群35.6±3.2歳、B群35.7±3.1歳、C群35.5±3.0であり、差は認められなかった。良好胚の妊娠率はA群53.5%(108/202)、B群60.9%(885/1453)、C群49.5%(45/91)、妊娠継続率はA群43.6%(88/202)、B群49.8%(723/1453)、C群36.3%(33/91)であり、いずれもB群とC群との間に差が認められた。良好胚の流産率はA群18.5%(20/108)、B群18.3%(162/886)、C群26.7%(12/45)であり、差が認められなかった。不良胚の妊娠率はA群25.7%(28/109)、B群49.5%(255/515)、C群19.4%(13/67) 、妊娠継続率はA群22.9%(25/109)、B群34.6%(178/515)、C群11.9%(8/67)であり、A群とB群、B群とC群との間に有意差が認められた。不良胚の流産率はA群10.7%(3/28)、B群30.2%(77/255)、C群38.5%(5/13)であり、差は認められなかった。
【結論】回復培養後に胞胚腔の拡張を充分に認めない胚では、妊娠率、妊娠継続率の低下が認められたが、症例数の制限もあり流産率には差が認められなかった。良好胚では回復培養後に凍結時と同じまで胞胚腔が拡張したで胚は発育が進んだ胚と比較して差がなく、融解後の拡張期までの発育スピードは臨床成績に影響を与えないことが示された。一方、不良胚では回復培養後の胞胚腔の拡張の有無、発育スピードが妊娠率、妊娠継続率に影響することが示唆された。