Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-19 PCOS 症例におけるIVMとCOSの培養成績の比較検討

学術集会 一般演題(口頭発表)

2021年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:山田 健市・菊地 裕幸・菅野 弘基・岸田 理英・吉津 葵・佐々木 郁弥・杉田 綺羅・品川 真澄・片桐 未希子・小川 誠司・吉田 仁秋

仙台ART クリニック

Abstract

【目的】
PCOS 症例において,In vitro maturation(IVM)はOHSSリス
ク回避の観点から,治療法の選択肢として考えられるが,IVMの培
養成績はControlled ovarian stimulation(COS)と比較して不良である.その原因として卵細胞質成熟と核成熟が同期していないことが考えられ,細胞質の未成熟は卵細胞質形態異常の一つとされる
Centrally located cytoplasmic granulation( CLCG),核の未成熟は紡錘体不可視と関係しているとの報告がある.また近年,タイムラプス培養により胚の異常分割と胚発生との関係も報告されている.そこで本研究では,PCOS 症例におけるIVM 培養成績低下の原因を探るべく,IVM 後のCLCG,紡錘体可視,胚の異常分割および培養成績をCOSと比較検討した.
【方法】
2018年10月から2021年6月,PCOS 症例にて採卵,ICSIを実施したI VM 群 41周期(平均年齢32. 8±3. 5歳),COS 群 44周期(平均年齢35.0±3.9歳)を対象とした.検討項目はそれぞれ,MII 率,CLCG 発生率,紡錘体可視率,正常受精率,第三分割までの異常分割率,Day5 / 6胚盤胞発生率および良好胚盤胞発生率とした.
【結果】
IVM 群とCOS 群のMII 率は49.4% vs 73.4%,CLCG 発生率は0.6% vs 5.6%,紡錘体可視率は85.4% vs 93.2%,正常受精率は65.8% v s 7 8.1%,異常分割率は70.3% v s 4 3.0%,Day5 / 6胚盤胞発生率は43.5% vs 54.1%,Day5 / 6良好胚盤胞発生率は16.3% vs 34.1%あった.IVM 群はMII 率,紡錘体可視率,正常受精率,Day5 / 6良好胚盤胞発生率が有意に低く,異常分割率が有意に高くなった.COS 群はCLCG 発生率が有意に高くなった.Day5 / 6胚盤胞発生率に有意な差は認められなかった.
【考察】
本研究において,COS 群に対してIVM 群では正常受精率,良好
胚盤胞発生率が有意に低下していた.これは,IVM 群の紡錘体可視率が低下したことからも,核の未成熟が関与している可能性が考え
られた.一方で,細胞質成熟との関与が報告されるCLCG 発生率は,
IVM 群に対してCOS 群で有意に高く,これまで考えられていたIVM由来卵の細胞質が未成熟であるという見解とは一致しなかった.
今後,受精・胚発生率の向上として,至適な成熟タイミング指標も含
めて,IVMの培養方法や誘発法を改良し検討していく必要がある.

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