Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-18 子宮内フローラとFET 妊娠との関連性

学術集会 一般演題(口頭発表)

2021年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:長谷川 麻理1)・田中 克2)・野手 健造1)・坂井 和貴1)・荒井 渉2)・桜庭 喜行2)・伊木 朱有美1)・鍋田 基生1)

1) つばきウイメンズクリニック, 2) Varinos 株式会社

Abstract

【目的】
近年,子宮内細菌叢(子宮内フローラ)と不妊症の関連性が指摘されているが,凍結融解胚移植(FET)の妊娠成績に対する胚グレードと子宮内フローラの影響についての研究は豊富とは言えない.本研究では,子宮内フローラがFETの妊娠成績に及ぼす影響について後方
視的に検討した.
【対象と方法】
2018年10月から2019年12月までに当院にてFETを患者同意のもと実施し,臨床妊娠の成否が得られている1,126周期を対象とした.2018年10月以降に初めてFETを施行した症例に限定して解析を行っ
た.FETより以前に子宮内膜を採取し,次世代シークエンサーを用
いて子宮内フローラを解析した.Lactobacillus属を含む菌叢データ
を用いて,FETの成績との関連性を検討した.
【結果】
胚グレードを限定しない場合,FET 妊娠群と非妊娠群のLactobacillus 属占有率は各々75.5%と65.4%となり,有意差はなかった(p=0.732).胚グレードBB 以上の症例では,FET 妊娠群と非妊娠群のLactobacillus属占有率は各々81.2%と40.0%となり有意差はなかった(p=0.134)が,FET 妊娠群でLactobacillus属占有率が高い傾向が見られた. 胚グレードBB 以上において,Lactobacillus 属占有率を90%以上(LDM)と90%未満(NLDM)
に分割すると,FET 妊娠群と非妊娠群でLDMであった割合は妊娠群で73.3%,非妊娠群で40.0%となり有意差はなかった(p=0.289)が,FET 妊娠群でLDMの割合が高い傾向が見られた.カットオフ値を再検討しLactobacillus 属占有率を9.1%に設定すると,9.1%未満
の群と9.1%以上の群におけるFET 妊娠率は各々40.0%と89.5%で
あり,有意差が見られた(p=0.042).また,カットオフ値を96.2%とした場合も,96.2%未満の群(73.7%)と96.2%以上の群(20.0%)で有意差が見られた(p=0.047).そこで,Lactobacillus 属占有率を9.1%以上(HLM)と9.1%未満(LLM)に分割すると,HLM であった割合は妊娠群で89.5%,非妊娠群で40.0%となりFET 妊娠群でHLMの割合が有意に高かった(p=0.042).
【考察】
本研究結果から,胚グレードBB 以上に症例を限定すると
Lactobacillus属占有率がFETの妊娠に寄与していることが示唆され,そのカットオフ値は9.1%あるいは96.2%であった.FETによる妊娠率を向上させるには, 形態良好胚を選定し, 子宮内Lactobacillus 属占有率が9.1%以上であることが望ましいと考えられた.

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