Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-16 男性不妊治療患者の喫煙に対する意識調査および精液所見との比較

学術集会 一般演題(口頭発表)

2023年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:下村 紫・藤井 美喜・青木 愛・江夏 徳寿 ・塩谷 雅英

英ウィメンズクリニック

Abstract

【目的】不妊治療において喫煙は男女ともに治療の妨げとなる要因の一つとして挙げられる。男性については精液濃度の低下、運動率の低下、精子の奇形率の上昇、女性については早期閉経や流産リスクの上昇等があげられる。厚生労働省の統計によると現在習慣的に喫煙している成人の割合は男性27.1%、女性7.6%である。年齢階級別にみると、30~60歳男性でその割合が高く、約30%が喫煙しており、不妊治療中の夫婦の年齢層と重なっている。本検討では男性不妊治療患者の喫煙に対する理解度を把握し、精液所見との比較を行うことで、今後の必要な介入や支援について考えることを目的とした。【方法】2022年11月21日~2023年1月31日に男性不妊外来を受診した男性患者に対しWebによるアンケートを実施した。【成績】アンケートは320部配布し210件返答があった(返信率65.6%)。平均値はそれぞれ年齢36.8歳、不妊治療期間15か月、精液量3.29ml、精液濃度56M/ml、運動率36.8%、精子運動性指数算出値(SMV)193であった。喫煙群については現在喫煙している者を喫煙群、過去喫煙歴がある者、喫煙歴のない者を非喫煙群とし、喫煙群13.3%、非喫煙群86.7%だった。喫煙群のうち「禁煙したいと思う」17.9%、「禁煙したいと思うがやめられない」53.6%、「禁煙したいと思わない」28.6%だった。喫煙が精子に影響を与えると知っているのは喫煙群で85.7%、非喫煙群で87.3%であり両群間に差は無かった(p=0.76)。精子所見を喫煙群と非喫煙群で比較すると精液量3.2ml vs 3.3ml、精液濃度50M/ml vs 58M/ml、運動率30.8% vs 37.7%となり喫煙群で有意に運動率が低かった(p=0.04)。【結論】男性不妊患者のうち、喫煙群において喫煙が精子に影響を与えると知っているものの、喫煙をやめられていないという現状がわかった。喫煙を止めるためには禁煙補助薬の使用、禁煙外来の活用等があるが、最も重要なのは「禁煙する」という当人の動機づけである。そもそも成人の行動変容を促すには対象が行動変容ステージのどの段階にあるのかを把握し、その段階に応じた支援が必要である。また、喫煙は精子の運動率に影響を与えているということが確認された。喫煙が不妊治療に与える影響とあわせて禁煙の必要性を患者へ伝え、禁煙への強い動機付けを支援していく介入を考慮していくことが重要だと考える。

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