O-15 SMASを用いた男性不妊患者へのL-カルニチン,CoQ10含有サプリメント投与の有効性の検討
2023年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:朝香 未来1)・尾形 龍哉1)・佐藤 学2)・森本 義晴 1)
1)HORACグランフロント大阪クリニック,2)IVFなんばクリニック
Abstract
【目的】
近年、男性不妊症の割合は増加してきており、男性側に問題があるケースは約半数に及ぶ。当院の検討において、乏精子症、精子無力症と診断された患者を対象とし、ミトコンドリアの代謝促進に作用するL-カルニチン、エネルギー産生に必要な物質であるCoQ10を主成分としたサプリメントを投与すると精子濃度、運動率にて改善されることを以前報告した(小倉ら、2021年日本受精着床学会)。同様のサプリメントを服用した患者に対し、精子運動解析システム(SMAS)を用いて、服用前後の精液検査データの詳細な比較を行った。
【方法】
当院を受診し、乏精子症・精子無力症と診断された男性不妊患者38名に(26~49歳、平均39.1歳)を対象にL-カルニチン、CoQ10、ビタミンC・E、リコピン、亜鉛、セレン、ビタミンD、ビタミンB12、葉酸を含有したサプリメントの投与を最短1週間、最長半年行った。精液検査はSMASを用いて実施し、精液量、総精子濃度、運動率、精子運動性指数(SMV)、前進運動率、直線速度、曲線速度、平均速度、直進性、直線性、曲線性、頭部振幅、頭部振動数を算出した。上記13項目について、服用前後の比較検討を行った。
【成績】
運動率は服用前(35.5 %)と比べ服用後(48.9 %)と有意に高かった(p<0.01)。SMVは、服用前(127.4)に対し、服用後(195.5)で有意に高かった(p<0.01)。前進運動率は服用前(29.1 %)と比較し、服用後(38.7 %)で有意に高かった(p<0.01)。その他10項目には服用前後で有意な差は認められなかった。
【結論】
サプリメントの服用により、精子運動率、SMV、前進運動率に改善が見られた。本サプリメントのCoQ10は、ミトコンドリアの電子伝達系で働く酵素であり、エネルギー産生に重要な物質であることから、L-カルニチンとの相乗効果で精子のミトコンドリア活性が向上し、精子運動に関わる項目を改善させたことが示唆された。今後は、サプリメント服用が受精率に効果があるかを検討したい。