O-15 PGT-A 妊娠継続症例から見たPGT-A 非実施だった場合の移植回数シミュレーション
2021年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:清水 雅司・安田 忠頼・髙田 彩音・坂本 朱華利・杉浦 百香・織田 文香・白井 美希・丸岡 沙織・杉田 敦・村田 朋子・村田 泰隆
ART クリニックみらい
Abstract
【目的】
PGT-Aは治療周期あたりの成績は向上させないが,胚移植あたり
の成績を向上させることが報告されており,より少ない移植回数で挙
児に至ることが期待できる.当院では2020年2月よりPGT-A特別臨床研究の分担施設としてPGT-Aを実施してきた.PGT-A 妊娠継続症例において,PGT-Aを行わずに移植胚を選択した場合に何回目の胚移植で妊娠継続に至ったのかをシミュレーションすることでPGT-Aの有効性を検証した.
【方法】
2020年2月から2021年5月,PGT-Aを実施して妊娠継続に至った
42症例(PGT-Aエントリー時:38.3歳,採卵2.2回,移植4.4回)を対
象とした.
検討1:PGT-Aエントリーから何回目の胚移植で妊娠継続に至った
かを比較した.実際に行ったPGT-A 解析結果による移植回数に対して,PGT-Aを行わず,これまでの形態評価を中心に胚選択し,単一胚移植を繰り返したと仮定した場合に何回目の移植で妊娠継続に至った胚盤胞(もしくは他の正2倍体胚)を選択していたかを平均移植回数として比較した.また,患者年齢37歳以下と38歳以上でも比較した.
検討2 :PGT-A 解析結果による(実際の)移植回数よりもPGT-A非
実施の場合に移植回数が多くなると推定された症例数を調べた.また,患者年齢37歳以下と38歳以上でも比較した.
【結果】
検討1:PGT-A実施と非実施だった場合の平均移植回数はそれぞれ1.24回(1-2回) vs 2.38回(1-7回) で,PGT-A非実施の場合に有意に移植回数が多くなった.37歳以下は15症例あり,平均移植回数はそれぞれ1.33回(1-2回) vs 1.73回(1-5回) ,38歳以上は27症例あり,平均移植回数はそれぞれ1.19回(1-2回) vs 2.74回(1-7回) だった.37歳以下では有意差はなかったが,38歳以上ではPGT-A 実施よりも非実施の場合で有意に移植回数が多くなると推定された.
検討2 :PGT-A非実施だった場合に,実際よりも移植回数が多くなると推定された症例数は42症例のうち21症例あり,37歳以下では15症例のうち5症例(33.3%),38歳以上では27症例のうち 16症例(59.3%)だった.38歳以上の症例において,PGT-Aを実施することで移植回数が少なくなると推定される症例数が増加する傾向が見られた.
【考察】
PGT-Aの有効性は患者年齢によって異なることが示唆された.38
歳以上ではPGT-Aを実施することで非実施に比べて少ない移植回数
で妊娠継続に至ることが推定され,治療期間の短縮にPGT-A が有効だと考えられた.一方で,37歳以下では66.7%(10/15)の症例で
PGT-Aを実施しなくても移植回数は増加しないと推定されたことか
ら,経済的負担や受精卵へのリスクも考慮して慎重にPGT-Aを実施
するべきだと考えられた