O-15 男性用抗酸化サプリメントの造精機能障害患者に対する有用性の検討
2022年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:小川 誠司1)・太田 邦明2)・岸田 理英1)・菅野 弘基1)・菊地 裕幸1)・西澤 圭織1)・品川 真澄1)・片桐 未希子1)・小林 秀行3)・吉田 仁秋1)
1) 仙台ART クリニック
2) 東京労災病院産婦人科
3) 東邦大学医学部泌尿器科学講座
Abstract
【目的】
不妊原因の半数は男性側にあるとされ,その8割が造精機能障害
である.造精機能障害患者の中には精液の酸化ストレスが高い患者も多く,酸化ストレスが精子のDNA 障害を引き起こし,受精率の低下や胚発生不良の一因となると報告されている.そこで今回我々は男性用抗酸化サプリメント(メネビット®)摂取が精液の酸化ストレスに与える影響及び治療成績への相関を前方視的に検討した.
【方法】
2020年10月から2022年3月までに当院で不妊治療を行なっている患者を対象に男性用抗酸化サプリメント(メネビット®)摂取群(47名)と非摂取群(45名)に分け,摂取前,3ヶ月後,6ヶ月後の各種精液のパラメーター,精液酸化ストレス指標である酸化還元電位(sORP),8-OHdG,DNA 断片化指標(DFI)の変化,及び研究期間中の両群での受精率,胚盤胞発生率,臨床妊娠率などの体外受精の治療成績との関連性について解析を行った.
【成績】
各種精液のパラメーターはサプリメント摂取前後で有意な変化は認められなかったが,sORPは摂取群では3ヶ月後に有意に低下し(摂取前:7.05 摂取3ヶ月後:1.36 ; P=0.012),8-OHdGは摂取6 ヶ月後に有意に低下した(摂取前:16.3 摂取6 ヶ月後:12.1 ; P=0.0011).さらにsORP1.90 mV/106sperm/ml 以上の酸化ストレス高値患者では,サプリメント摂取群で3ヶ月後以降に精液濃度は有意な改善を認めた(摂取前:8. 08×10 6/ml 摂取6 ヶ月後:19.7×106/ml ; P=0.039).
また両群間で受精率,胚盤胞発生率に差は認められなかったが,臨床妊娠率はサプリメント摂取群で高い傾向にあった(摂取群:65.4%,非摂取群: 33.3%;P=0.0646).
【結論】
男性用抗酸化サプリメントの摂取は,精液の酸化ストレスを低下させ,臨床妊娠率にも影響を与えることが示唆された.このことから造精機能障害患者において酸化ストレスをターゲットとした抗酸化サプリメントの摂取は有効であると考えられた.