O-15 閉鎖型胚凍結デバイスを用いた 出生児予後への影響
2020年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:的場 麻理1)・幸池 明希子1)・柴田 美智子2)・佐藤 学2)・森本 義晴1)
1)HORAC グランフロント大阪クリニック, 2) IVF なんばクリニック
Abstract
【目的】
胚及び卵子凍結では現在,国内では開放型デバイスCryotop(TOP)が広く使用されている.しかし,昨今の感染症対策の観点から,開放型デバイスでは胚及び卵子の液体窒素を介した感染の可能性が危惧されている.この為,国内でも今後閉鎖型デバイスの需要がより高まると予想される.既に,閉鎖型デバイスと開放型デバイスの違いによる胚の生存率や臨床妊娠率において,両法間で差がないことが報告されているが,出生児の予後に関する報告はほとんどない.本研究では,閉鎖型デバイスCryotop CL(CL)由来の出生児予後について後方視的検討を行った.
【対象と方法】
2015年8月から2017年12月の間に凍結融解胚移植を施行し,単児出産に至ったCL 由来の47児,TOP 由来の234児を対象とした.まず,それぞれの在胎週数,性比,出生時及び1歳半時の体重・身長,出生時の先天異常率を比較した.次にKIDS 乳幼児発達スケール(KIDS)を用いて1歳半での発達について比較検討した.なお,今回の対象患者は,児の発育に関する任意の調査に同意を得ている.
【結果】
CL由来児とTOP由来児にて,在胎週数(mean±SD; 39.2±1.6 vs39.3±2.0週),性比(男児/女児; 1.04 vs 0.97),出生時の体重・身長(3116.0±421.2 vs 3051.1±488.0g, 49.5±2.3 vs48.9±2.5cm),及び1歳半時の体重・身長(10.5±1.1 vs 10.7±3.7kg, 80.5±3.0 vs 80.2±
4.3cm)では有意差は認められなかったが,出生時の先天異常率では有意差を認めた(4.2% vs 0.9%).また,KIDSアンケート項目である運動発達,操作発達,理解言語発達,表出言語発達,概念発達,対子ども社会性発達,対成人社会性発達,しつけ発達,食事発達,総合発達においても,有意差は認められなかった.
【考察】
閉鎖型デバイスと開放型デバイスにおける胚凍結において,出生時及び1歳半時の身体発育に加えて,1歳半時の精神発達においても差がなかった.今回の検討で差が認められた先天異常については,ヒトでは3 ~ 5%の頻度で発生すると言われており,CL由来児の先天異常率はこの範囲にある.だが,今後も長期的な調査を継続する必要である.凍結融解時の胚生存率に差がないという過去の報告も踏まえると,今後の感染症対策のひとつとして,ヒト胚の凍結保存には閉鎖型デバイスが非常に有用である.