O-14 PGT-SRの結果とStengel-R 法による主たる不均衡型転座の予測との一致率
2021年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:遠藤 俊明1)・2)・3)・4)・5)・馬場 剛1)・久野 芳佳1)・池田 詩子2)・本間 寛之3)・逸見 博文2)・稲木 誠5)・原 鐵晃6)・尾崎 守7)・倉橋 浩樹8)・斎藤 豪1)
1) 札幌医科大学産婦人科, 2) エナ麻生ART クリニック, 3) 斗南病院生殖内分泌科, 4) さっぽろART クリニック, 5) さっぽろ不育症着床障害コンソーシアム, 6) 県立広島病院生殖医療科, 7) 金沢医科大学ゲノムセンター, 8) 藤田医科大学分子遺伝学
Abstract
【目的】
均衡型相互転座保因者の不育症例が挙児を得る方法の一つとして,
PGT-SR(preimpla ntation genetic testing for str uctu ral
rearrangements)がある.Stengel-Rutkowsk(i Stengel-R)法は,
切断点から不均衡型転座を持ちながら生児として生まれるリスクを推
定する方法である.この方法を用いると高年齢婦人へのトリソミー児が生まれるリスク情報を提供するのに類した「不均衡転座を有しながら生児として生まれる推定リスク」を情報提供できる.一方でわれわれは,切断点からStengel-R法やHC-Forumサイトで推定した不均衡型転座様式とPGT-SRで得られる胚の主たる不均衡型転座バター
が高率に一致することを以下の② に対して検討し報告した
(ASRM2019).ただこれには限界があったため,今回推定法を再考した.
【方法】
①当科で経験している不均衡型転座の生児を得ている4症例について,また② 第5 版のGardner & Sutherland’s Chromosome
Abnormalities and Genetic Counselingのtable 5-3に記載されている女性保因者33例,男性保因者20例にPGT-SR後の胚について,Stengel-R法等で不均衡型転座のリスクを再検討比較した.特に隣接2分離に関しては,追加の方法による検討も試みた.
【結果】
①当科で経験している不均衡型転座の児を有する症例は隣接1分離の
児を得ているt(10; 18)保因者,3: 1分離の児のt(5; 14)の保因者,
隣接2分離の児のt(15; 21)とt(9; 21) の保因者症例に対して
Stengel-R 法で計算した不均衡型転座パターンでは,前3例は,前児の不均衡型転座パターンとPGT-SRの結果は一致していた.ただ4例目の推定不均衡型転座様式は3:1分離で前児の不均衡型転座パターンとは異なっていた.さらにパキテン図を利用したJalbert法での検討もしたが,隣接2分離の予測は不可だった.ただPGT-SRの胚の主たる不均衡型分離の結果は,Stengel-R 法で推定した分離パターンと4例とも一致していた.
② Table 5-3では様々な切断点の症例において,Stengel-R法の予
測とPGT-SRの結果の比較では女性保因者の場合は約80%,男
性保因者の場合は約65%の一致率であった.
【結論】
Stengel-R法は切断点から胚の不均衡型転座様式を予測するのに
有用と考えられる.ただ隣接2分離が関与する場合と男性保因者の場
合は,一致率が低下する.現時点では均衡型相互転座保因者の主た
る不均衡型分離胚の予測にはStengel-R法だけでなく他の方法も組
み合わせて予測するのが望ましい.