O-13 使用済み培養液中cell free DNAはTE 生検より胚の染色体状態を反映する
2021年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:佐藤 亘1)・設楽 明宏2)・富樫 嘉津恵1)・白澤 弘光1)・熊澤 由紀代1)・児玉 英也1)・寺田 幸弘1)
1) 秋田大学産婦人科 2) 秋田赤十字病院
Abstract
【目的】
PGT-Aによる胚選択は,着床率向上や流産率低下が期待されている.一般的なPGT-Aは,胚盤胞期のTE から5個程度の細胞を生検し核型解析を行う.しかし,TE 生検の結果が胚そのものの核型を表現しているとは言い難く,さらにはTE生検による胚への侵襲が懸念されている.TE 生検に変わるPGT-Aの手法として,使用済みの培養液中cell free DNAを解析する非侵襲性着床前診断(noninvasive
PGT-A: niPGT-A)が提唱されているが,その運用は定まっていない.近年確立された胚培養システムにより,in vitroで最大14日間までの胚長期培養が可能になった.我々はこの胚長期培養プロトコールを使用し,TE生検ならびに使用済み培養液が,受精後最大10日の胚染色体をどれほど反映しているかを検討した.
【方法】
本研究は2006年から2016年の間に当院で不妊治療をした12人の患者から回収された20個の余剰胚を,日本産婦人科学会および当院での倫理委員会の承認と患者から個別同意を得た上で使用した.胚凍結時の平均患者年齢は35.6±3.2年であった.20個の胚は5日目もしくは6日目に凍結されたものである.20個の余剰胚を融解,透明帯除去後にTE 生検を行い,PGT-Aサンプルとした.回復培養に用いた使用済培養液をniPGT-Aサンプルとした.TE 生検後の胚を受精後最大10日間長期培養後のoutgrowthをサンプリングし,それぞれNGSによる染色体分析を行った.
【結果】
TE 生検細胞=PGT-Aサンプル(n=20), 使用済み培養液
=niPGT-A サンプル(n=20),長期培養後胚=outgrowthサンプル
(n=20)が得られ,NGS 解析を行った.niPGT-Aとoutgrowthサンプルの一致率は9/16(56.3%)で,PGT-Aとoutgrowthサンプルの一致率は7/16(43.8%)であった.Outgrowthサンプルに対して
niPGT-Aは感度100%,特異度87.5%,陽性的中率88.9%,陰性性的中率100 %であった.同じくPGT-A は感度87.5%,特異度77.8%,陽性的中率87.5%,陰性的中率75%であった.
【考察】
NGS 結果の一致率,感度,特異度からniPGT-A がPGT-Aよりも優れている可能性があることが示唆された.培養中の胚は,ICMとTEの両方がアポトーシスを起こし,使用済み培養液のDNAはこれらの細胞系統の両方に由来している可能性がある.使用済み培養液のcell free DNAはICMとTEの両方由来のDNAを反映するため,TE生検よりも胚盤胞全体の染色体状態を反映している可能性が考えられる.