Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-11 micro PNを含む3PN 胚の形態学的所見と培養成績の解析

学術集会 一般演題(口頭発表)

2022年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:橋本 紗季1)・木田 雄大1)・北坂 浩也1)・吉村 友邦1)・福永 憲隆1)・2)・浅田 義正1)・2)

1) 浅田レディースクリニック
2) 浅田生殖医療研究所

Abstract

【目的】
媒精後,形態学的に3個以上の前核(PN)を有する胚は,倍数性異常のリスクを有するため,異常受精卵として移植対象外となる.近年,2PN以外に小さな前核(micro PN)を有する3PN胚においては,胚盤胞まで発生し妊娠・出産した例が報告されており,臨床的有用性が議論されている.しかし,micro PNにはサイズなどのバリエーションが存在し,基準が確立されていないために倍数性異常を有する3PN 胚との境界が不明確である.そのため,移植の際には倍数性解析が推奨されており,簡便に正常胚を見分ける方法は無い.一方,同様に形態学的には異常受精胚である1PN 胚においては,胚盤胞移植を行うことで2PN 胚と同様の臨床成績が得られることから臨床的有用性が確認されており,胚盤胞培養によって正常胚をある程度選別できると考えられる.
そこで本検討では,micro PNを含む3PN 胚を移植対象胚として
簡便に選択する方法の探索を目的とし,受精後のタイムラプス画像を用いてmicro PNのサイズ及び雌雄の由来によって培養成績に影響が見られるか解析を行った.
【方法】
ICSIを施行後,受精確認時にmicro PNを含む3PN胚と評価され,タイムラプス観察にてmicro PNの雌雄由来を解析できた27個を対象とした.micro PNの雌雄の判別は極体直下から雌性前核に連なって形成したものを雌性とし,雄性前核付近に隣接して形成したものを雄性とした.媒精後17時間のmicro PNの直径計測を行いサイズ及び由来によって2群に分け,それぞれのDirect cleavage(DC)率,胚盤胞到達率,良好胚盤胞率,Day5胚盤胞到達率・良好胚盤胞率を比較した.
【成績】
micro PNの雌雄由来を解析した結果,雌性:85.1%(23/27),雄性:14.8%(4/27)であり,雌性由来の割合が高かった.それぞれのDC 率: 39. 1%(9/ 23)vs 0%(0/ 4), 胚盤胞到達率: 26. 0%(6/ 23)vs100%(4/4),良好胚盤胞率:26.0%(6/23)vs 50.0%(2/4),Day5胚盤胞率:26.0%(6/23)vs 75%(3/4),Day5良好胚盤胞率:26.0%(6/23)vs 25.0%(1/4)であり,胚盤胞到達率で雄性由来が有意に高かった(P<0.05).
micro PNの最大・最小直径は15.00μm,6.65μmであり,中点値
の10.83μmで2群に分類した.10.83μm 未満,10.83μm 以上それぞれのDC 率: 25. 0%(4/ 16)vs 45. 4%(5/ 11), 胚盤胞到達率: 31. 2%(5/16)vs 45.4%(5/11),良好胚盤胞率:31.2%(5/16)vs 27.3%(3/11),Day5胚盤胞率:25.0%(4/16)vs 45.4%(5/11),Day5良好胚盤胞率: 25. 0%(4/ 16)vs 27. 3%(3/ 11)であり,2群間に差は無かった.
【結論】
micro PNの雌雄由来によって胚盤胞培養成績に差があることが明らかとなった.そのため,雌雄由来が正常胚選択の指標の一つとして利用できる可能性が考えられる.しかし,本検討では染色体解析は行っていないため,簡便に正常胚を選択する方法の解析としては不十分である.今後は胚盤胞まで成長した胚の染色体解析を行い,micro PNの雌雄由来によって倍数性異常の3PN 胚との区別が可能か検討していきたい.

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