Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-11 精子選別におけるAIの有用性 ―AIによる良好精子選別支援の効果検討―

学術集会 一般演題(口頭発表)

2023年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:石橋 和悟 ・長谷川久隆 ・浦嶋 紗妃・宮﨑 史佳・村田 さくら・星野 由貴 ・佐藤 由莉香・佐野 憲一・関本 僚平 ・吉田 淳

木場公園クリニック

Abstract

目的
顕微授精(ICSI)に採用する精子の選別では、培養士の技術に依存が大きく客観性に課題がある。
近年、人工知能(AI)による画像認識技術の急激な進歩から、不妊治療の現場においてもAIが活用され客観的な胚評価が可能となっている。
株式会社エビデントは倒立顕微鏡下で直接精子を観察しながら、リアルタイムでAIによる精子選別が可能となるシステムを開発した。
我々は株式会社エビデントと共同研究し、AIによる良好精子選別支援が倒立顕微鏡下での精子選別にどのような効果があるか比較検討した。
方法
頭部の幅、長さ、縦横比、楕円との近似、左右の対称性、空胞の数、頚部の幅に関してAIが良好精子と判定する数値を基準培養士が設定した。
2023年3月~6月に当院で顕微授精を実施した中で、研究同意を得て提供された臨床使用後の破棄精子10サンプルを対象とした。ICSI歴11年と4年のスタッフ2名がそれぞれAI未使用下、AI使用下で精子を10匹ずつ選別し、基準培養士が良好精子を判定、良好精子選別率を算出した。
AI使用下では、AIにより選別された精子の中から最終的に各個人が良好と判断した精子を選択するものとした。加えて、精子1個あたりの平均選別時間を比較検討した。
成績
設定した基準となる数値は、頭部の幅:3.16~4.35μm、頭部の長さ:4.50~5.55μm、頭部縦横比:1.27~1.51、頚部の幅:1.98以下、頭部と楕円の近似:0.044以下、左右対称性:0.4以下、空胞の数:無しとした。
良好精子選別率はICSI歴11年のスタッフのAI未使用下、AI使用下でそれぞれ69%±12.2 、56%±14.3であった。また、ICSI歴4年のスタッフではAI未使用下、AI使用下それぞれ67%±10.0、65%±12.8であった。
共にAIの選別補助による良好精子選別率に有意な差は無かった。
精子1個辺りの平均選別時間はICSI歴11年のスタッフでAI未使用下、AI使用下それぞれ92.8±31.5(秒)、56.1±12.8(秒)(P<0.01)であった。ICSI歴4年のスタッフではAI未使用下、AI使用下それぞれ101.8±33.7(秒)、80.3±20.2(秒)(P<0.01)であった。
両スタッフ共にAI使用下において選別時間が有意に減少した。
結論
良好精子選別率に差が無く、1個あたりの精子選別の時間が短縮されたことから、AIによる良好精子選別支援は精子選別の精度を維持したまま、業務の効率化が可能となることが示された。
また、ICSIの経験年数によらずAIによる精子選別に効果が得られたことから、顕微授精をこれから始めるスタッフへの教育支援にも効果が期待された。

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