Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-10 精子調整法別での精子ヒアルロン酸結合能および培養成績と精子DNA断片化の相関

学術集会 一般演題(口頭発表)

2022年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:永野 明子・小牟禮 志帆・水田 真平・松林 秀彦・石川 智基

リプロダクションクリニック大阪

Abstract

【目的】
近年,精子DNA 損傷の少ない良好精子を選別する目的で様々な
デバイスが開発されている.ヒアルロン酸に結合した精子を用いたICSI( HB-ICSI)を行うことで,精子DNA断片化のリスクが低い成熟精子を選別できる可能性が報告されており,我々は前周期において培養成績が不良であった症例に対してHB-ICSIを行うことで胚盤胞率が改善したことを報告した.そこで今回2層密度勾配遠心法,非遠心型精子調整法(ZyMot®)の2種の精子調整法別でのヒアルロン酸結合能(付着率)および培養成績を比較し,精子DNA 断片化率(SDF:Sperm DNA Fragmentation rate)との相関についても解析した.
【方法】
2021年12月から2022年1月に当院で採卵を行い,精液量2.0mL 以上,運動精子100万/mL 以上かつ卵子が6個以上獲得できた39周期424個を対象とした.精子調整は2層密度勾配遠心法+swim up 法(DGCS 群),非遠心型精子調整法(ZM 群)の2種で行い,原精液,2群の精子調整後のSDF および付着率をそれぞれ測定し相関性を調べた.さらに両群間での培養成績(受精率,胚盤胞率,良好胚盤胞率)を比較検討し,付着率(65%以上と65%未満の群)で差異があるか解析した.SDFはフローサイトメトリー,付着率はHBA®Ass a y(CooperSurgical 社)を用いて測定した.非遠心型精子調整デバイスはZyMot MultiTM(850μL)スパームセパレーター(DxNow社)を使用した.
【成績】
DGCS 群の付着率平均値は68.8%,ZM 群68.3%,原精液51.7%
でありDGCS 群,ZM 群は原精液よりも有意に高かった(P<0.05).DGCS 群のSDF平均値は3.5%,ZM 群1.1%,原精液13.3%でありDGCS 群,ZM 群は原精液よりも有意に低く(P<0.05),ZM 群はDGCS 群より低率であった(P<0.05).原精液,各精子調整後において付着率とSDFの相関はみられなかった.培養成績について,IVFでは原精液での付着率65%以上の群の2PN 率(64.3%)は65%未満の群(47.7%)より有意に高かった(P<0.05).調整法に関わらず胚盤胞率,良好胚盤胞率は有意差を認めず,ICSIでもいずれの項目においても有意差を認めなかった.
【結論】
2種の精子調整を行うことで原精液よりもヒアルロン酸結合精子,DNA 損傷の低い精子を高率に回収できることが分かった.また非遠心型精子調整を行うことで2層密度遠心勾配法およびswim up 法よりもDNA 損傷の少ない精子を回収できることが分かった.ヒアルロン酸結合能と精子DNA 損傷との相関はみられなかったが,IVFにおいてはヒアルロン酸結合能が高い方が受精率は高くなり,受精能の予測となり得ることが示唆された.

loading