ICSI 後の1PN 由来胚が妊娠に 至らない原因の探索
2016年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:井頭 千明・大月 純子・古橋 孝祐・片田 雄也・辻 優大・岩﨑 利郎・松本 由紀子・苔口 昭次・塩谷 雅英
英ウィメンズクリニック
Abstract
【目的】
cIVF-1PN由来胚は,2倍体の正常胚である場合があり健常児が生まれる一方,ICSI-1PN 由来胚は,ほとんどの胚に染色体異常があり妊娠に至らないことが報告されている.よって本研究ではcIVF-1PN由来胚およびICSI-1PN 由来胚の臨床成績を解析すると同時に,ICSI-1PN 由来胚において染色体異常率が高くなる原因模索のため,1PNの大きさに着目し検討することを目的とした.
【方法】
2011年1月~ 2014年12月に凍結融解単一胚盤胞移植を行った7,589周期の後方視的解析を行った.cIVF-2PN 由来胚盤胞を移植した5,332周期,ICSI-2PN 由来胚盤胞を移植した2,165周期を対照とし,cIVF-1PN 由来の胚盤胞移植72周期,ICSI-1PN 由来の胚盤胞移植20周期の臨床妊娠率,流産率,生児獲得率,先天異常率の比較検討を行った.さらに,2013年1月~ 2015年2月の期間にタイムラプス観察を行った胚のうち,1PN であった79個において,核膜消失直前の1PN 面積をcI VF 由来(39個),ICSI 由来(40個)別に算出し比較検討を行った.
【結果】
7,589移植周期中3,084周期が臨床妊娠(40.6%)に至り,それぞれの臨床妊娠率はcIVF-1PN: 36.1%,cIVF-2PN: 42.1%,ICSI-1PN: 0%,ICSI-2PN: 37.6% であった.cIVF における流産率はcIVF-1PN:16 . 0 %,cI V F-2 PN: 2 3 . 8%,生児獲得率はcI V F-1PN: 2 9.6%,cIVF-2PN: 31.7%,先天異常率はcIVF-1PN: 5.9%,cIVF-2PN: 2.7%であり,いずれもcIVF-1PNとcIVF-2PN 間に有意差を認めなかった.一方,ICSI-1PN 由来胚からの妊娠は得られず,臨床妊娠率はICSI-2PNと比べ有意に低い結果となった(P=0.001).1PNの平均面積はそれぞれICSI-1PN: 666.4μm2( ±105.2),cIVF-1PN: 720.8μm2 (±114.4)であり,ICSI-1PNの平均面積はcIVF-1PNに比べ有意に小さかった(P=0. 028).
【考察】
cIVF-1PN 接合子は胚盤胞まで発生すれば2PNと同等の生児獲得率が得られたが,ICSI-1PN 接合子は胚盤胞へ発生しても移植後の妊娠例は得られなかった.ICSI-1PN のサイズがcIVF-1PN のサイズと比べ有意に小さいことから,ICSI-1PN 由来胚が妊娠に至らない原因
はICSI 時の紡錘体穿刺(吸引)による紡錘体- 染色体複合体損傷と関連する可能性が考えられる.