Cryptzoospermia 症例におけ る射出精子とTESE精子の比較
2016年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:奥山 紀之1)・青野 展也1,2)・ 岡 奈緒1)・小幡 隆一郎1)・前川 紗耶香1)・小倉 友里奈1)・相良 恵里1)・永尾 光一3)・竹内 巧1)・ 京野 廣一1)
1) 京野アートクリニック高輪 2) 京野アートクリニック 3) 東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
Abstract
【目的】
Cryptozoospermiaでは射出精液中に認められる極少数の精子が顕微授精に用いられているが,精巣から回収した(TESE)精子を使用した治療も行われており,その有効性が議論されている.今回,胚の発育状況や妊娠率について射出精子とTESE 精子の比較検討を行った.
【方法】
2012年9月から2016年6月にcryptozoospermiaと診断され,射出精子のみを用いてICSIを行った7症例,TESE 精子のみを用いた8症例,加えて射出精子およびTESE 精子の双方を使用した7症例を含む計22症例を対象とし,患者背景,受精率,胚盤胞発生率,および妊
娠率を射出精子とTESE 精子の間で比較した.このうち,同一採卵周期内で双方の精子を用いてICSIを施行した4症例は,さらにサブグループとして成績を比較した.
【結果】
射出精子で22周期,TESE 精子で23周期にICSIを行った.夫の平均年齢は射出・TESE 精子でそれぞれ38.2±6.7 vs. 39.6±6.3歳で有意差を認めなかったが,LH(mIU/ml)は8.8±1.5 vs.5.1±2.3,FSH(mIU/ml)は14.2±2.8 vs. 9.0±6.0,T(ng/ml)は3.5±0.8 vs. 4.7±1.9で,射出精子群で有意(P<0.05)にLHとFSH が高かった.妻の平均年齢は射出・TESE 精子で34.7±6.1vs 36.1±5.6歳で有意差を認めなかった.受精率は63.2%(120/190) vs. 51.2% (104/203),胚盤胞率は43.7% (45/103)vs. 46.0%(40/87),新鮮および融解胚移植での累積妊娠率はそれぞれ18.8%(3/16),30.0%(9/30)であった.受精率は,射出精子が有意(P<0.05)に高かったが,胚盤胞率と妊娠率は両群間に有意差はなかった.出産例は射出精子群2例,TESE 精子群で5例であった.同一採卵周期に射出およびTESE 精子の両方を使用したのは4症例5周期の受精率は,射出精子とTESE 精子で87.5(14/16)vs. 66.7%(12/18),胚盤胞率は50.0%(6/12) vs.44.4%(4/9),新鮮および融解胚移植による累積妊娠率は,射出精子で0%(0/4),TESE 精子では66.7%(2/3)であったが,統計的な有意差はなかった.
【考察】
射出精子の方が受精率は高かったが,妊娠,出産数はTESE 精子で多い傾向にあり,Cryptozoospermia の患者においてはTESE 精子の積極的な使用で生産率が向上する可能性が示唆された.