ART出生児3,223名のフォロー アップ:胚凍結融解が児の身体発 育に及ぼす影響
2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:菊地 寿美1)・青野 展也1,2)・中條 友紀子1)・服部 裕充1)・中村 祐介1)・高橋 瑞穂1)・戸屋 真由美1)・小泉 雅江1)・五十嵐 秀樹1)・京野 廣一1,2)
1) 京野アートクリニック,2) 京野アートクリニック高輪
Abstract
【目的】
生殖補助医療(ART)の安全性を確認するためにART由来出生児の発達調査は非常に重要である.
当院では1995年よりART由来児の身体と運動能力の発達調査を6歳まで行っている.
今回は調査結果をもとに,媒精方法別に胚凍結融解の有無が出生児の身体発育に及ぼす影響について検討した.
【方法】
1996 ~ 2016年の期間にARTにて単胎児として出生した児3,223名を対象とした.
調査は両親へのアンケート形式で実施した.在胎週数,児の出生時体重と身長,そして出生時から1歳までは3 か月毎,その後,1歳6か月,2歳から6歳までは1年毎に身長,体重および先天異常の有無について調査した.
以上の項目に加え低出生体重児(2,500g 未満)率,巨大児(4,000g以上)率について,c-IVFにおける新鮮胚移植群(以下A 群とする)と凍結融解胚移植群(以下B 群とする),ICSIにおける新鮮胚移植群(以下C 群とする)と凍結融解胚移植群(以下D 群とする)に分け,胚凍結融解の及ぼす影響を媒精方法別に比較検討した.
【結果】
平均在胎週数,出生時体重,出生時身長,低出生体重児率,巨大児率はc-IVFのA 群(330名)とB 群(550名)それぞれで38.6±2.4週 vs.39.1±2.1週(P<0.01),2,919g vs.3,102g(P<0.01),48.5cm vs. 49.1cm(P<0.01),16.2% vs.
6.5%(P<0.01),0.3% vs. 1.1% で,巨大児率以外で有意差を認めた.
先天異常率は3.3% vs. 3.1%と有意差を認めなかった.
その後の体重と身長は生後3 か月で差が認められなくなった.ICSIのC 群(952名)とD 群(1388名)それぞれで39.0±1.9週vs. 39.2±2.2週(P<0.05),2,963g vs.3,083g(P<0.01),48.8cm vs. 49.4cm,12.4% vs.
8.4%(P<0.01),0.6% vs. 1.1%で,出生時身長と巨大児率以外で有意差を認めた.
先天異常率は3.4% vs.2.7%と有意差を認めなかった.その後の体重は生後6か月で差が認められなくなった.
【結論】
c-IVF,ICSIともに胚凍結融解により出生時体重が重くなり,低出生体重児率が低下する可能性が示唆された.
しかし,その後c-IVF では3か月以降,ICSI では6 か月以降で有意差が無くなり,身体発育は短期間でキャッチアップすると考えられた.
先天異常率に有意差が無かったことから,胚凍結融解は児の先天異常に影響を及ぼさないと考えられる.