40歳以上の胚移植におけるAMH と累積臨床妊娠率の検討
2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:知念 日菓利・藤田 陽子・石井 鈴奈・浅見 真依・大川 莉歩・鈴木 望文・榎本 恵・濱田 道子・堀川 道晴・武谷 雄二
ウィメンズクリニック大泉学園
Abstract
【目的】
ART 反復不成功例にとって,治療を継続するのか,終結するのかを判断するということは非常に難しい問題である.
そこで,当院にて新鮮胚移植,凍結融解胚移植を行った40歳以上の症例を対象に,移植回数ごとの累積臨床妊娠率および年齢別の臨床妊娠率,流産率を算出し,ART 開始時のAMH 値別に治療終結時期の目安が求められるか検討した.
【方法】
2009年1月~ 2016年12月までに胚移植を行った40歳以上195症例441周期を対象とした.
対象はAMH値1.0ng/ml未満(A群:88症例199周期)と1.0ng/ml 以上(B 群:107症例242周期)の2群に分け,それぞれにおいて移植回数ごとの累積臨床妊娠率と,妊娠症例(A 群:31症例,B 群:51症例)あたりの累積臨床妊娠率を求め検討した.
さらに,年齢別の臨床妊娠率,流産率を求め検討した.
AMH値は初回採卵時の1年前後以内に測定したものを採用した.
【結果】
累積臨床妊娠率はA 群35.2%,B 群47.7%であった.A 群においては6回目以降での妊娠例はなかった.
また,A 群の妊娠例のうち約90%が3回目までに妊娠に至り,5回目で妊娠率が100%に達した.
一方,B 群では5回目以降でも妊娠例があり,最大8回目での妊娠例があった.
臨床妊娠率はA 群40歳;38.9%(7/18),41歳;53.1%(17/32),42歳;25.0%(2/8),43歳; 7. 1%(1/ 14),44歳; 40. 0%(4/ 10),B 群は40歳; 64. 7%(22/ 34),41歳;53.6%(15/28),42歳;42.9%(9/21),43歳;33.3%(3/9),44歳;15.4%(2/13)であり,45歳以上はどちらも妊娠例がなかった.
流産率はA 群40歳;42.9%(3/7),41歳;52.9%(9/17),42歳;100.0%(2/2),43歳;100.0%(1/ 1),44歳; 75. 0%(3/ 4),B 群は40歳; 36. 4%(8/ 22),41歳; 40. 0%(6/ 15),42歳; 55. 6%(5/ 9),43歳; 66. 7%(2/ 3),44歳; 100. 0%(2/ 2)であった.
【結論】
AMH 値1.0ng/ml 未満の症例は妊娠例の約90%が3回目までに妊娠に至り,6回目以降には妊娠例がないことから,5回程度が治療終結の目安の一つとなると考えられた.
一方,AMH値1.0ng/ml 以上の症例では,6回目以降にも妊娠例が散見されたことから,移植可能な胚が得られれば,移植を繰り返すことで妊娠に至る可能性があると思われた.
しかし,臨床妊娠率の検討では,AMH値1.0ng/ml 以上でも45歳以上には妊娠例がなく,年齢が上がるごとに臨床妊娠率は低下し流産率は上昇していた.
移植を継続していく場合でも,移植回数だけではなく年齢なども考慮しART 終結時期を考えていく必要がある.