2種類のSingle mediumを用いた胚培養成績の比較検討
2017年度 学術集会 一般演題(ポスターセッション)
発表者:阿部 礼奈・角本 知世・古橋 孝祐・辻 優大・岩﨑 利郎・伊藤 宏一・水澤 友利・松本 由紀子・苔口 昭次・塩谷 雅英
英ウィメンズクリニック
Abstract
【目的】
ムコ多糖類であるヒアルロン酸を培養液に添加することで胚着床率の向上が報告されているが,胚発生そのものに促進効果があるかについてはいまだ十分な知見が無い.
そこで今回,ヒアルロン酸含有を特徴とするOrigio 社のSAGE 1-Stepと,ヒアルロン酸を含有しない従来の培養液の培養成績を比較検討したので報告する.
【方法】
2016年11月から2017年2月に当院で採卵を行い,受精判定時に2PNが4個以上得られた195症例(2PN=1,317個)を対象とした.
得られた2PNを受精判定以降Origio 社のSAGE 1-StepとLife Global 社のglobal(1%HSA)の2種類の培養液にランダムに分けて培養し,分割率,分割期良好胚率,胚盤胞発生率,良好胚盤胞率を検討した.
【結果】
SAGE 1-Step 群(2PN=655個)とglobal 群(2PN=662個)の分割率(98.6% vs 97.7%),分割期良好胚率(52.6% vs 53.0%),および胚盤胞発生率(53.9% vs 50.1%)では両群間に差は見られなかったが,継続培養胚当たりの良好胚盤胞率(26.7% vs 19.9%)と,胚盤胞当たりの良好胚盤胞率(49.5% vs 39.8%)はSAGE 1-Step群で有意に高くなった(P<0.05).
【考察】
ヒアルロン酸は,卵胞液,卵管分泌液そして子宮腔液にも存在することが報告されていることから,培養液に添加することでより自然に近い環境で胚を培養できる可能性がある.
本検討において,ヒアルロン酸を含有するSAGE 1-Stepは,胚盤胞発生率には差がないものの,良好胚盤胞率を向上させることが示唆された.
ヒアルロン酸は粘性を有し,細胞に対して物理的保護作用を持っていることがその理由の一つと推測される.
今後,培養液に添加されたヒアルロン酸の効果メカニズムについての詳細な解析が必要と考える.