Papers and Abstracts

論文・講演抄録

0PN 胚および1PN 胚の臨床利用 の可能性

学術集会 一般演題(ポスターセッション)

2016年度 学術集会 一般演題(ポスターセッション)

発表者:石垣 菜月・井上 須美子・樋本 美穂・岩崎 遥・松本 貴重・飯島 圭子・松岡 瞳・打越 沙織・陣内 彦良

JWC 陣内ウィメンズクリニック

Abstract

【目的】

当院では媒精から18 ~ 19時間後に受精判定を行い,2PN 胚を正常受精としているが,近年0PN 胚や1PN 胚の中にも正常受精している胚があるとの報告もある.しかし,経時的連続観察が可能なタイムラプスを導入していない施設では,0PN 胚や1PN 胚の正常性を判断するのは
難しい.また,当院では低刺激周期を主としており,周期を無駄にしない為に,0PN 胚または1PN 胚であっても,通常の成長が見られる胚は患者にリスクを説明,同意を得た場合のみ,新鮮胚移植や凍結融解胚移植を行っている.そこで,当院における0PN 胚,1PN 胚の成績に
ついて検討を行った.

【方法】

2013年1月~ 2016年5月までに当院にてIVF またはICSIを行った551症例624周期を対象とし,1)0PN,1PN 胚の割合,分割胚率,Day3良好分割胚率(Veeck 分類にてG2-6cell 以上),胚盤胞率,良好胚盤胞率(Gardner 分類にてBB 以上)を検討した. 2)さらに,0PN 胚または1PN 胚の新鮮胚および凍結融解胚移植の妊娠率を同期間中の2PN由来胚と比較した.

【結果】

1)0PN 胚は全体の17.4%,1PN 胚は6.4%を示し,IVF-0PN,ICSI-0PN,IVF-1PN,ICSI-1PN はそれぞれ23.4%,36.8%,86.9%,92.3% が分割を開始した.良好分割胚率は,25.8%,29.9%,32.1%,31.3%で有意差はなかった.また,胚盤胞率は43.2%,44.6%,25.9%,22.2%と1PN 胚の胚盤胞率が有意に低かった(P<0.01).良好胚盤胞率は21.1%,20.0%,17.1%,10.0%で有意差は認められなかった.
2)0PN 胚,1PN 胚,2PN 胚の新鮮胚移植の妊娠率はそれぞれ18.5%,22.7%,20.4%,凍結融解胚移植の妊娠率は34.3%,27.3%,34.7%といずれも差は見られなかった.ICSI-1PNの移植でも,2例で妊娠に至った.

【考察】

本検討からは,IVF-0PN,ICSI-0PN,IVF-1PN,ICSI-1PN の分割胚率,良好分割胚率,良好胚盤胞率に有意差はなかったが,胚盤胞率においては,1PN 胚が0PN 胚よりも有意に低い値を示した.また,妊娠率は症例数が少ない為,0PN 胚,1PN 胚,2PN 胚で有意差
は見られなかったものの,0PN 胚や1PN 胚を移植し妊娠に至った症例が確認された.したがって,胚盤胞まで成長した0PN 胚や1PN 胚の移植も選択肢の一つとして視野に入れることも必要であると思われたが,出産まで検討していない為,今後さらなる検討を行いたい.

loading