Papers and Abstracts

論文・講演抄録

0-22 子宮内フローラの結果とART成績の関連-複数の臨床パラメータとの比較検討-

学術集会 一般演題(口頭発表)

2020年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:坂井 和貴1) ・田中 克2) ・田中 志穂1) ・大西 弘法1) ・野手 健造1) ・長谷川 麻理1) ・伊木 朱有美1) ・荒井 渉2) ・長井 陽子2) ・鍋田 基生1)

1)つばきウイメンズクリニック 2)Varinos 株式会社

Abstract

【目的】

凍結融解胚移植(FET)の妊娠成否には複数の要因が関わっており, 近年, 子宮内フローラ等の子宮内環境も妊娠に関与することが 明らかとなってきた.FETの妊娠成否にどのような臨床パラメータが影響を及ぼすのかを明らかにするため, それらの関連性について後方視的に検討した.

【対象と方法】

患者同意を得て2018年10月から2019年12月までに当院にて FET を行い, 臨床妊娠の成否が得られている1,126周期を対象とした. FET以前に子宮内フローラ,BMI, 酸化ストレス度等の複数の臨床パラメータを測定した.得られたデータを用いて,FETの妊娠成否と の関連性を検討した.2018年10月以降に初めてFETを施行した症例に 限定して解析を行った.

【結果】

複数の臨床パラメータからFETの妊娠成否を予測するロジスティッ ク回帰モデルを構築した結果,Lactobacillus属占有率と胚グレードが 説明変数として選択された.このモデルを用いて ROC 解析を実施したところ, 高精度で FETの妊娠成否を予測でき(AUC=0.839), 成否を 分ける上で最適な線形予測子のカットオフ値を発見した(p=0.007).該 当のカットオフ値を満たす胚グレードとLactobacillus属占有率の条件は,胚グレードAB 以上かつLactobacillus属占有率5.3% 以上(条件1), あるいは胚グレードBB以上かつLactobacillus属占有率49.1%以上(条 件2)であった.検証の結果,条件1を満たす群と逸脱する群では FET の妊娠率はそれぞれ 89.5%と40.0%で, 有意差が得られた(p=0.042). また, 条件2を満たす群と逸脱する群では FET 妊娠率はそれぞれ 81.0%と50.0%で,有意差は得られなかった(p=0.290).

【考察】

ロジスティック回 帰 モデル からFET の成否を 予 測 する上で, Lactobacillus 属占有率と胚グレードが大きく寄与していることが明らかとなった.また,胚グレードAB以上かつLactobacillus属占有率5.3% 以上, あるいは胚グレード BB 以上かつLactobacillus属占有率49.1% 以上であれば,FETにて妊娠成立する可能性が高いことが示唆された.

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