Papers and Abstracts

論文・講演抄録

高齢母親を対象としたART治療中から治療後の妊娠までの継続的支援

勝又 由美

2017年度 年次大会-講演抄録日本生殖看護学会パネルディスカッション 高年齢者のART治療後の次世代養育の現状と課題と日本生殖看護学会における取り組み

学会講師:勝又 由美

Abstract

はじめに

女性のキャリア形成や晩婚化により,高年妊娠から妊娠合併症・出産リスクが増加傾向にある.
そのような背景を踏まえ,不妊治療中から妊娠・出産・育児までを見据えた継続的な支援が求められる.
当院は地域周産期母子医療センターを併設していることや,病棟配属の看護師が外来も管理をするユニット制を導入しているため,高年妊娠に対し多職種で支援する体制が構築されている.
また,ユニット制を導入していることで,外来・入院を分け隔てなく信頼関係を築いた看護師が担当することができるため,継続的な支援ができる医療施設である.
不妊治療が「妊娠をゴール」にするのではなく,妊娠・出産・育児など各ステージで多職種が連携し患者やその家族を協働で支援する必要がある.

A R T 治療中から妊娠・出産を考えた健康管理

不妊治療を行なう患者の高年齢化は,肥満や糖尿病・高血圧など生活習慣病を抱えた患者の増加につながり,妊娠前から健康管理に留意することが必須である.
また,子どもの養育者として健康状態を維持することが求められるため,妊娠を目指すだけでなく,妊娠・出産・育児を見据えた健康管理について指導をしていく必要がある.

妊娠前から出産後の育児までを踏まえた継続的な支援

不妊治療後は妊娠に喜びを感じ妊娠継続に対する使命感が高まると同時に,流産や胎児の健康状態に不安を抱いている.
そのため,胎児に影響を及ぼす合併症を併発している場合には,新生児科医師やNICUスタッフとの連携が求められる.
また,妊娠後も不妊症であるアイデンティを抱えているため,高年妊娠をハイリスクと捉えるのではなく,個々のリスクを評価し患者が臨む看護を実践する必要がある.

高齢の患者は,様々な社会経験から妊娠の喜びや命の尊さを感じながら育児を行うことが出来る.
また経済的にも安定した状態で育児を行うことが出来るが,身近な支援者である両親も高齢者であるため育児のマンパワーが乏しい傾向にある.
出産を機に支援が完結するのではなく,地域と連携を図り長期的に支えるシステムの構築が必要とされる.

出産後に次の妊娠を考えた指導

出産後は早期に不妊治療を再開し第2子を希望していた患者が,妊娠・出産を経て現在の育児に専念したいなどの気持ちの変化が生じる場合がある.
凍結受精卵の保存状況や次回の妊娠について確認し,意思決定が出来るように情報提供を行い,患者の選択を尊重し支えることも看護師の重要な役割である.

おわりに

不妊治療・妊娠・出産・育児と各ステージで完結するのではなく継続して患者を支えるシステムを構築していく必要がある.

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