高齢出産の母親への社会的支援の実際と課題 ー総合周産期母子医療センターのNICU退院支援専従社会福祉士の立場からー
2017年度 年次大会-講演抄録|日本生殖看護学会パネルディスカッション 高年齢者のART治療後の次世代養育の現状と課題と 日本生殖看護学会における取り組み
学会講師:藤原 久子
Abstract
京都第一赤十字病院は京都府唯一の総合周産期母子医療センターとして機能している.
その上,京都府基幹災害医療センターであり,救命救急センターをもつ病院である.
平成27年度当院分娩数617件,うち帝王切開188件,双胎出産36件,品胎1件で,NICU(9床)入院数は,平成27年度303人・翌平成28年度301人とほぼ300人程度での推移.
出生体重1,500g以下の未熟児の入院は平成28年度37人と高水準を維持している.
このような使命を担っている病院ということ,および地域的に祇園・宮川町といった昔からの花街や観光地・繁華街,また京都駅からも近い地域にある病院であることから,あらゆる方々の利用がある.
そういう中でも,助産制度が使える産科でもあり,身体的なハイリスク妊婦はもちろん社会的ハイリスク妊婦もたくさん利用される病院である.
このため,当院は京都市とモデルケースとしての児童虐待未然防止のための医療機関と行政の連携事業を開始し(この事業はその後京都府全域の行政機関と医療機関に広がることになった),診療情報提供書による連携を平成22年7月から行ってきた.
その連携件数は年間70から80件に及ぶが,リスク要因としてART治療後という項目がなかったにもかかわらず,平成26年,27年,28年の連携件数のうち,ART治療後の出産ケースが全連携件数に占める割合が,3.8%→ 5.3%→7.5%と急増している.
これは高齢出産にともなって様々なリスク要因が高くなること,また年々ART治療によって出産される児の数が増加しているということの現れであると考えられる.
当院で経験した40歳以上の産後フォローの事例
1)ART治療後21トリソミーと出生前診断されても出産を選択された事例
2)精神疾患がもともとあった方がART治療後妊娠されて,出産前からの地域全体でのフォロー事例 をもとに,現状を探り,産科から新生児科・小児科との連携の中で,ご本人やご家族の抱えている問題を明らかにすることにより,今後増加していくと考えられる高齢出産妊産婦およびART治療後出産の方々への支援体制を構築し,子育て支援の一環として地域包括ケアへ組み入れ,すべての妊婦が安心して出産・育児に臨めるようにする一助になればと考える.