高プロラクチン血症の治療後にIVF成績は改善するのか?
2019年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:村井 未来1) ・佐藤 学1) ・中岡 義晴1) ・森本 義晴2)
1)IVF なんばクリニック 2)HORAC グランフロント大阪クリニック
Abstract
【背景】
高プロラクチン(PRL)血症は,排卵障害,月経異常,黄体機能不全 や流産の原因になり,PRL 正常な患者に比べ胚質が低下する.当院で は高 PRL 血症患者にはカバサールまたはテルロンを処方しPRLの分 泌を抑え体外受精を行っている.今回, 高 PRL 血症治療後の患者の 体外受精成績を調べた.
【方法】
高PRL血症投薬治療中の患者と過去に診断され現在正常化している 患者を高 P 群とし,当院で2017年1月から2018年12月に体外受精を行っ た 39歳以下の高 P 群109人とPRL 正常な患者(正常群)1,014人を対象に刺激周期採卵(ST)と 低刺激周期採卵(MS)の ICSI,Conventional-IVF(c-IVF)で分け, それぞれ成熟率, 正常受精率, 移植可能胚率を比較した.また同期間に移植を行った39歳以下の高 P 群124人の患者と正常群1,264人をSTの胚移植とMSの胚移植で分け,それぞれ移植後の妊娠反応陽性率と化学流産,GS 率,FHB 率を比 較した.
【結果】
ICSIを行った高 P 群で正常群に比べ成熟率が低下した(77.8% vs.74.1% , P<0.05).c-IVFを行った患者で成熟率に差はなかった(84.3% vs. 85.4%).また高 P 群と正常群で受精率に差はなかった(ICSI:80.0% vs. 78.6% , c-IVF:81.1% vs. 79.3%).移植可能胚率は MS の高 P 群で低下した(ICSI:82.6 % vs. 57.7 % , c-IVF:75.9 % vs.
43.2% , P<0.05).STとMS の移植可能胚率に差はなかった(ICSI:76.3% vs. 78.2% , c-IVF:69.9% vs.67.9%).高 P 群の妊娠反応陽 性率は正常群に比べ ST(57.6% vs. 44.0% , P<0.05),MS(41.7% vs.36.8% , P<0.05)ともに低下した.化学流産,GS 率,FHB 率に差は なかった.
【考察】
高 P 群の受精方法によって成熟率に差がありICSIで低かったことか ら, 高 PRL 血症では採卵当日の卵成熟が遅れることが示唆された. c-IVFでは翌日に成熟確認するため成熟率の差が埋まったと考えられ る.本検討では, 高 PRL 血症治療後であっても胚発生や妊娠に影響 があり, 特にMSの胚で差は顕著に見られた.高 PRL 血症の患者で 妊娠反応陽性率は低下したものの, 妊娠後の経過に差はなかったこと から可能であれば刺激周期で多くの卵子を獲得し, 治療を進めること が望ましいと考えられる.