Papers and Abstracts

論文・講演抄録

Piezo-ICSI における最適穿刺位置を特定する リアルタイム画像解析システムの開発と臨床的有用性の検討

前川 朋広

2021年度 年次大会-講演抄録日本臨床エンブリオロジスト学会 「授精法のブレイクスルーを考える」

学会講師:前川 朋広

Abstract

近年,国内のART実施施設においてPiezo-ICSI を 導入する施設が増加している.Piezo-ICSI は先端が平 坦なインジェクションピペットに微細な振動を加えるこ とで透明帯と卵細胞膜を穿破する方法で,先端にスパ イクがついたインジェクションピペットで透明帯を穿孔さ せ吸引圧をかけて卵細胞膜を穿破する従来法とは異な り,透明帯貫通時に卵子を変形させず細胞質を吸引す ることなく精子を注入することができる.受精率が向上 し,変性率が低下するとの報告もあり,教育の標準化 も図り易く,当院ではICSI症例は全例Piezo-ICSIを行っ てい る.しかし,P i e z o – I C S I は 卵 子 に 対 する 侵 襲 性 は 低いが,穿刺過程で卵細胞膜の伸展性が低くピエゾパ ルスの使用なしに意図せず破膜した場合,変性し易い. また,破膜後に変性しなかった場合でもその後の培養 成績が不良になることを我々は報告している.すなわち, Piezo-ICSI 時に破膜を回避することは,変性率の低下, 培養成績の向上に繋がり,一つでも多くの移植可能胚 を獲得することに寄与できると言える. 破膜が起こる可能性は卵細胞膜の穿刺位置によって 異なり,その位置を目視で判別することは困難である. そこで,兵庫県立大学大学院と連携し,画像解析技術 を利用して破膜が起きた場合と起きなかった場合の ICSI 時の動画を比較し,破膜が起こる可能性の高い 位 置を特 定することができないか検 討を行った.その 結果,破膜の有無によって卵細胞膜の形状特徴が異 なっていることが明らかとなり,その情報を基に破膜を 起 こし 易 い 位 置 を 識 別 す る こ と に 成 功 し た . こ の 原 理 を応用して開発したICSI POSITION DETECTOR (IPD)はリアルタイムで卵細胞膜を解析し,破膜が起こ る可能性をモニタ上に表示することができる,カメラと ソフトウェアによって構築された非侵襲的なシステムで ある.本講演では,IPD の開発に至るまでの経緯と,

現 在 ま で の 臨 床 に お け る 有 用 性 解 析 に つ い て 詳 しくお 話したい.

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