酸化ストレスがマウス体外成熟培養の成熟率とミトコンドリアクラ スターに及ぼす影響
2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:山田 健市1,2)・吉田 仁秋1)・原 健士朗2)・種村 健太郎2)
1) 仙台ART クリニック
2) 東北大学大学院 農学研究科応用生命科学専攻 動物生殖科学分野
Abstract
【目的】
体外成熟培養液に酸化ストレスを与えることが体外成熟培養時における培養環境,すなわち共培養か単培養かでMII成熟率に影響していることが示唆されている.
そこで本研究では,個体レベルでの酸化ストレスがマウス卵子体外成熟培養において,培養環境により,MII成熟率,細胞質成熟のひとつの指標であるミトコンドリアについてどのように影響しているかを明らかにすることを目的とした.
【方法】
2週齢ICR雌マウスにアセフェートを投与し,3週齢にてPMSG 7.5IU投与,48時間後に頸椎脱臼にて安楽死させ卵巣を採取,未成熟卵子(GV期)を回収した.
37℃,5% CO2,95%Air の条件下で,12時間体外成熟培養を行った.
その後,核相の判定を実施し,MitoTracker® Red CMXRosを用いて染色を行いミトコンドリアの分布を観察した.
培養方法は,共培養はCD法:Culture Drop,単培養はHD法:HangingDropにて培養を行った.
また,アセフェートの投与濃度は,コントロール区,低濃度区(7mg/kg),高濃度区(70mg/kg)とした.
【結果】
アセフェート投与によるCD 法,HD法それぞれのMII成熟率は,コントール区96.2%,92.4%,低濃度区85.0%,89.6%,高濃度区30.0%,58.6%となった.
高濃度区は他の区と比較しMII 成熟率がCD法,HD法,共に有意に低くなった.
また,CD法とHD法を比較した場合,高濃度区において,CD法のMII成熟率は有意に低下した.
MII期に達した卵子のミトコンドリアクラスター形成率は,CD法,HD法それぞれ,コントロール区7.8%,10.1%,低濃度区5.9%,4.7%,高濃度区0%,11.8%となり,ミトコンドリアクラスター形成率に有意な差はみられなかった.
【考察】
生体内に強い酸化ストレスを与えることは,マウス卵子の体外成熟培養においてMII成熟を阻害することが明らかとなった.
また,培養環境が,MII成熟率に関与していることが考えられた.
CD 法で有意にMII成熟率が低下したことから,強い酸化ストレスを受けた生体内から作られた未成熟卵子に体外成熟培養を実施する場合,パラクラインによりMII成熟が妨げられている可能性が示唆された.
本研究の結果から,個体レベルでの酸化ストレスを受けた場合,HD法を用いることでマウス卵子の体外成熟培養の核成熟が改善される可能性があると考えられる.
【結論】
アセフェートを高濃度(70mg/kg)マウスに投与することで,MII 成熟率は低下した.
高濃度区において,CD法(共培養)はHD法(単培養)と比較し,MII成熟率が低下した.
ミトコンドリアクラスター形成率は,CD法とHD法に有意な差はみられなかった.