自動タイムラプスインキュベーターにタイムラプス歴10年の培養士スキルは活かせるか
2019年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:古井 憲作・安藤 寿夫・鈴木 範子
豊橋市民病院総合生殖医療センター
Abstract
【目的】
タイムラプスインキュベーターは日常臨床への応用開始後約10年が経 過し, 画質等の向上を実現し自動分析化による人工知能的能力を搭載 した次世代型が発売された.今回,この新しいテクノロジーの革新的 要素とされる分割期胚段階での胚盤胞発生予測の妥当性と発展性をタ イムラプス経験を重ねてきた胚培養士による同様の予測と比較検討した.
【方法】
胚診断機能を備えた自動化タイムラプスインキュベーター Geri+/ Geri Assess®︎ 2.0・EevaTM3.0 software( メルクバイオファーマ社)を 用いた.各胚の第1胚分割から68時間経過後の細胞数を入力すること により74項目の特性分析より5段階のEeva スコアがアウトプットされた.これとは独立して68時間後までのタイムラプス画像により10年間のタイムラプス経験を有する胚培養士1名が,Eeva スコアを知らない状態で 各胚に対して同様の5段階スコアをつけた.胚盤胞期まで発生させた 胚について,両スコアを比較した.
【結果】
Eevaと胚培養士の両方が最も良いスコア 1をつけた分割期胚では 94.8%(55/58)が胚盤胞に到達した.Eava スコアが1だったが胚培養 士スコアが 2・3・4・5だった場合の胚盤胞発生は, それぞれ 66.7% (8/12)・75.0%(9/12)・0%(0/1)・0%(0/1)だった.逆に胚培養士ス コアが1だったが Eava スコアが2・3・4・5だった場合の胚盤胞発生は, それぞれ79.2%(19/24)・63.6%(7/11)・40.0%(2/5)・該当胚0だった. 両方のスコアが1だった場合の胚盤胞到達率94.8%(55/58)は,片方の みスコア1だった場合の68.2%(45/66)と比較して有意に(P= 0.00018) 高かった.
【考察】
Eevaによる評価はタイムラプス画像を見慣れていて経験が豊富な胚 培養士による評価と一致することが多かった一方で,評価が分かれるこ とも一部にあった.どちらが優れているということよりも, 評価が一致 した場合の発生予測が確度を大幅に高めたことから, 現段階で有用な 情報をすでに提供しているEevaが今後さらに進化可能であることが示 唆された.Eeva スコアの有用性がタイムラプス経験を積んだ胚培養士 による独立した評価を加えるとさらに向上した.