Papers and Abstracts

論文・講演抄録

胎盤性黄体ホルモン値測定による ホルモン補充下凍結胚移植におけ る補充終了時期の検討

学術集会 一般演題(口頭発表)

2016年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:荒川 修・大橋 浩衛・石川 佐知子・内山 洋子・住吉 香穂・細野 玉枝

荒川大桃エンゼルマザークリニック

Abstract

【目的】

本邦においては,近年,体外受精特に凍結胚移植による妊娠例が急増している.そしてプロゲステロン(P4)腟錠等が続々と市販されつつある.しかし,ホルモン補充下凍結胚移植(HR-FET)の治療終了時期の確実な決定因子はなく,外国のデータを参考にいまだ手探りの状況であり各施設でも苦慮しているのが現状である.当科では最近までP4腟錠使用患者の血中P4測定し終了時期を模索したが解決できなかった.血中P4 を測定してもP4腟錠を投与すると患者から産生される胎盤性P4と混在しているので終了時期決定の因子にならない.そこで経口薬と注射薬の黄体補充を行うことで,初めて胎盤性P4 のきれいなデータが確認された.このデータから終了時期と臨床的切迫流産率も併せて検討し報告する.

【方法】

2016年4月~7月まで経口薬及び注射薬によるHR-FETを施行し,臨床妊娠成立し12週以降まで心拍が確認できた単胎症例8例とした.月経3日目よりエストラーナまたはプレマリンを投与した.凍結胚移植前に,E2,P4 ,エコーにて自然排卵のないことを確認した.経口薬剤は ルトラール6 ~ 12mg 併用下に凍結胚移植行った.判定は妊娠5週前後に行い,内服は原則8週0日までとした.5週より毎週プロゲステロン125mg2A筋注とE2とP4 の測定とエコーで胎児の発育を確認した.終了はP4値15ng/ml 以上とした.

【結果】

8例の平均年齢は36.0歳(年齢範囲32 〜42歳)であった.移植胚は4分割胚2例,胚盤胞6例であった.血中胎盤性P4の推移は5週で0.125±0.19ng/ml,6週で1.04±0.53ng/ml,7週で3.64±1.03ng/ml,8週で7.51±2.30ng/ml,9周で11.66±4.86ng/ml,10週で16.04±6.22ng/ml,11週で19.35±7.47ng/ml,12週で23.18±8.85ng/mlであった.切迫
流産兆候は2/8例(25%)であった.

【考察】

本邦で初めて,妊娠黄体と薬剤性のP4 の影響のない状態での胎盤性P4 の血中濃度を測定した.その結果,胎盤からのP4 の上昇は7~8週に5ng/mlとなり10週で15ng/ml,11 ~ 12週で20ng/ml 以上となることが判った.従って切迫流産兆候を防ぐためには,血中P4 が15ng/ml以上になる最低10週,または安定する12週まで投与すれば,黄体機能不全の心配なく安心して妊娠経過を観察できる可能性が示唆された.

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