紡錘体観察有無による受精率の変化
2017年度 学術集会 一般演題(ポスターセッション)
発表者:川嵜 友貴・拝野 貴之・押尾 真紀子・石澤 亜希・笠原 佑太・白石 絵莉子・鴨下 桂子・岡本 愛光
東京慈恵会医科大学
Abstract
【目的】
当施設では2015年9月から新たに紡錘体可視化装置を導入し, 紡錘体を避けて顕微授精(ICSI)を施行するようになった.
ICSI 施行直前に紡錘体を観察したところ, 紡錘体が観察できる卵だけでなく紡錘体が観察できない染色体凝集期間の卵も確認することができた.
染色体凝集期間の卵に対しては, 数時間の追加培養を行い紡錘体が形成された後ICSIを施行することが望ましい.
他施設において卵丘細胞除去直後に紡錘体の有無を観察し, 紡錘体が観察できない場合1時間の追加培養を行った後にICSIを施行することで受精率の向上がみられた.
今回我々は, 30分の追加培養でも受精率が変化するか試みた.
【方法】
2015年10月〜2017年5月の間に当施設において紡錘体観察の後にICSIを施行した177症例310周期(747個)を対象とした.
採卵5時間後に卵丘細胞を除去し, 第一極体放出を確認し, ICSI 施行前に紡錘体が観察できた群を紡錘体観察可能卵群(sp+群), 紡錘体が観察できなかった群を紡錘体観察不可能卵群(sp- 群)とし, 受精率を比較した(検討1).
さらに, 紡錘体が観察されず30分の追加培養後ICSIを施行した追加培養群(c ult ur e 群)における受精率の変化を観察した(検討2).
【結果】
検討1) 紡錘体観察ができたsp+群と紡錘体観察ができなかったsp- 群の受精率はそれぞれ75.8%(455/600), 56.6%(64/113)であり, sp+群がsp-群と比較し有意に高率であった.
検討2) 30分の追加培養後にICSIを施行したculture 群の受精率は76.5%(26/34)であり, sp- 群と比し受精率の向上がみられた.
またsp+群と比し受精率は同等であった.
【考察】
今回の検討では受精率のみの評価であるが, ICSI 直前に紡錘体を観察できなかった場合, 短時間の追加培養であっても成績向上が期待できると考えられた.
今後は供試卵数を増やし受精率の検討を続けると共に,胚発生率, 妊娠率, ICSI 直前の紡錘体観察不可能卵に対する追加培養時間の検討を行うことで, さらなる臨床成績の向上を目指したいと考えている.